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 ロス・マクドナルド読破計画を一歩前進。本日の読了本は長編十四作目の『ファーガスン事件』。これが最後のノンシリーズ作品である。

 まずはストーリー。カリフォルニアで弁護士を営むビル・ガナースンは、エラ・バーカーという若い看護婦の弁護を担当することになった。彼女は盗品のダイヤの指輪を古物商に売った容疑で逮捕されたのだ。警察は彼女が最近多発している強盗事件の一味だと睨んだが、彼女は警察はおろかガナースンにも一切を話そうとしない。
 しかし、古物商の男が殺されて状況は一転。彼女はラリー・ゲインズというフットヒル・クラブに勤める男からそれをプレゼントされたのだと告白する。
 ガナースンはゲインズの行方を追い、ファーガスンという富豪夫妻のもとにたどり着くが……。

 ファーガスン事件

 ロス・マクドナルドの転換期に書かれた本作。前作のリュウ・アーチャーもの『ギャルトン事件』ではいよいよ後期の重厚な作風を強く感じさせる一作ではあったが、本作ではいったん方向性を再確認するかのように、これまでの流れとは異なるスタイルを試しているところが目につく。
 例えばアクションシーンをふんだんに盛り込んでみたり、主人公の生活や家族を描いてみたり。大雑把にいうと、探偵の存在が希薄になっていく後期のアーチャーものに対し、本作はしっかりと探偵役のガナースンを前面に出して物語を動かしているというイメージ。
 ここからは推測だが、おそらく著者はそのほうが効果的にテーマを描けるかどうか試してみたというところではないのだろうか。これをアーチャーものでいきなりやられると戸惑うが、ノンシリーズで、ということであればもちろんOK。そんなことは著者の方が百も承知だろう。

 事件そのものは相変わらず上手い。物語の序盤こそ看護婦の無罪を証明するためにラリー・ゲインズという男を追うという流れだが、事件の核心はいつしかファーガスンの新妻ホリー・メイへ。例によって途中からかなり複雑な事件であることが予想でき、そこからが著者の腕の見せどころである。
 複数の流れをきちんと収束させ、終盤ではかなり驚かされる場面も二回ほどあり(これがまた巧い!)、しかもラストの余韻も悪くない。

 ということで後期傑作とまではいかないまでも、全体としては充分に楽しめる一作。アーチャーものでは味わえない、家族のために戦うという主人公が見られるのも大きな魅力のひとつだろう。

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テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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