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 山尾悠子の掌編集『歪み真珠』を読む。
 まさにタイトルどおり。一般的な丸い真珠ではない、いびつだが個性的な美しさを備えた、この世に二つとないバロックパール(歪み真珠)のごとき作品を集めた一冊だ。
 まずは収録作。

「ゴルゴンゾーラ大王あるいは草の冠」
「美神の通過」
「娼婦たち、人魚でいっぱいの海」
「美しい背中のアタランテ」
「マスクとベルガマスク」
「聖アントワーヌの憂鬱」
「水源地まで」
「向日性について」
「ドロテアの首と銀の皿」
「影盗みの話」
「火の発見」
「アンヌンツィアツィオーネ」
「夜の宮殿の観光、女王との謁見つき」
「夜の宮殿と輝くまひるの塔」
「紫禁城の後宮で、ひとりの女が」

 歪み真珠

 以前に読んだ長篇『ラピスラズリ』もたまらなくよかったが、本書では山尾悠子の魅力がさらにストレートに伝わってくる。
 その魅力はやはり文章にあるだろう。それは学んだからといって書けるようなものではない。幻想的で一見、難解に見える題材をあたかも一枚の絵のように見せる描写のセンス。硬質ながらもその凜とした文体は圧倒的なオリジナリティをもつ。
 そして、そこから紡ぎ出される幻想的世界のなんと蠱惑的なことか。天使や女王、女神に蛙、人魚、双子……。ファンタジーによくある題材ではあっても、著者の手にかかると、これまで私たちが知っていた物とはまったく異なる魂をもち、異なる世界を作り上げる。

 どの話も素敵だが、個人的お好みでは「美神の通過」、「向日性について」、「ドロテアの首と銀の皿」、「影盗みの話」、「火の発見」あたり。
 とりわけ「向日性について」はまいった。何かの比喩かと思いきや、本当に向日性の世界の話で驚く。すなわち日のあたる場所では人々は活動できるのだが、いったん影の中に入ってしまうと静かに眠りに入ってしまう。このあまりに特殊でまったりした世界が、ほんの数ページの話なのに鮮烈なイメージで迫ってくる。変にストーリー性を与えず、このイメージだけで読ませる恐ろしき一篇である。

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テーマ:幻想文学 - ジャンル:本・雑誌




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