- Date: Sat 18 05 2019
- Category: 海外作家 ロング(アメリア・レイノルズ)
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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アメリア・レイノルズ・ロング『死者はふたたび』(論創海外ミステリ)
本日の読了本はアメリア・レイノルズ・ロングの『死者はふたたび』。先月に読んだ本邦初紹介の『誰もがポオを読んでいた』に引き続いての一冊。
私立探偵のダヴェンポートは、「溺死した夫の名前を名乗る男が現れたので調査してほしい」という依頼を受ける。死亡したはずの夫は映画俳優のブルース。依頼人は妻のリンダである。
指定されたホテルに赴いたダヴェンポートだったが、リンダはそこで「男はやはりブルースだった」と話し、依頼を取り下げられてしまう。納得のいかないダヴェンポートだったが、夫妻をよく知るキンケイド医師から思いもよらない秘密を打ち明けられる。実はブルースの生死は彼の遺産の行方が大きく影響するため、ブルースを名乗る男はそのために雇われたのではないかというのだ。
あらためてキンケイドによって依頼を受け、調査を再開するダヴェンポートだったが、遺産相続に関係する女性と車にいるところを襲われ……。

『誰もがポオを読んでいた』の解説で、著者は“貸本系アメリカンB級ミステリの女王”である、みたいなことが書かれていて、思わず納得するぐらいの面白さはあったが、本作もけっこう頑張っている。
前作とは一変して、こちらでの主人公は私立探偵。しかも軽ハードボイルド調の一人称というスタイルである。したがってストーリーとしては一本道ながら、名乗り出た映画俳優が本物かどうかという興味に加え、殺人事件の犯人探しもあるため、決して単調な感じにはならない。むしろプロットは意外に凝っていて、しっかり構成されているという印象である。
ラストはスレたミステリマニアなら予測の範囲内だろうが、うむ、貸本をメインに書いていた作家さんがこれだけやってくれれば十分でしょ。
惜しむらくは軽ハードボイルド調というそのスタイル。“軽”という但しは付くにしても、文章が平易すぎること(つまりキザさが足りない)、主人公の言動がけっこう日和っていることについては、ハードボイルドとしてはかなり不満が残る。ハードボイルドは内面も重要だが、実はスタイルこそ第一義だったりするわけで、そういう意味では残念である。
まあ、この点についても貸本系B級ミステリということであれば、そこまで目くじら立てることではないのだけれど。
ということで不満もあるが、全体としてはよくできた作品である。他の作品も紹介されれば、ぜひ続けて読んでみたいところだ。
私立探偵のダヴェンポートは、「溺死した夫の名前を名乗る男が現れたので調査してほしい」という依頼を受ける。死亡したはずの夫は映画俳優のブルース。依頼人は妻のリンダである。
指定されたホテルに赴いたダヴェンポートだったが、リンダはそこで「男はやはりブルースだった」と話し、依頼を取り下げられてしまう。納得のいかないダヴェンポートだったが、夫妻をよく知るキンケイド医師から思いもよらない秘密を打ち明けられる。実はブルースの生死は彼の遺産の行方が大きく影響するため、ブルースを名乗る男はそのために雇われたのではないかというのだ。
あらためてキンケイドによって依頼を受け、調査を再開するダヴェンポートだったが、遺産相続に関係する女性と車にいるところを襲われ……。

『誰もがポオを読んでいた』の解説で、著者は“貸本系アメリカンB級ミステリの女王”である、みたいなことが書かれていて、思わず納得するぐらいの面白さはあったが、本作もけっこう頑張っている。
前作とは一変して、こちらでの主人公は私立探偵。しかも軽ハードボイルド調の一人称というスタイルである。したがってストーリーとしては一本道ながら、名乗り出た映画俳優が本物かどうかという興味に加え、殺人事件の犯人探しもあるため、決して単調な感じにはならない。むしろプロットは意外に凝っていて、しっかり構成されているという印象である。
ラストはスレたミステリマニアなら予測の範囲内だろうが、うむ、貸本をメインに書いていた作家さんがこれだけやってくれれば十分でしょ。
惜しむらくは軽ハードボイルド調というそのスタイル。“軽”という但しは付くにしても、文章が平易すぎること(つまりキザさが足りない)、主人公の言動がけっこう日和っていることについては、ハードボイルドとしてはかなり不満が残る。ハードボイルドは内面も重要だが、実はスタイルこそ第一義だったりするわけで、そういう意味では残念である。
まあ、この点についても貸本系B級ミステリということであれば、そこまで目くじら立てることではないのだけれど。
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いえいえ、これだって小説の大事な話ですので決して謝る必要は。
ちなみに純文学でも実験小説とか前衛的な作品がありますが、ああいうのもほとんどストーリーはどうでもよくて、あくまで芸術としての表現(文章)の可能性の追求が主眼です。
ハードボイルドも誕生した当初はそういう面が強かったのですが、いつのまにか主人公の生き様がハードボイルドの定義みたいになってしまって、だいぶ意味合いが変わってきましたね。