- Date: Sun 02 06 2019
- Category: 国内作家 楠田匡介
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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楠田匡介『深夜の鐘』(湘南探偵倶楽部)
湘南探偵倶楽部さんが復刻した『深夜の鐘』を読む。『都会の怪獣』と同じく楠田匡介の手による子供向け探偵小説。連載された媒体も『都会の怪獣』と同様で、小学館の学習月刊誌『小学六年生』 。昭和二十九年四月号~三十年三月号にかけてなので、ちょうど一年かけて連載されたことになる。
こんな話。春休みを利用し、友人の林君とともに市川の別荘へ遊びにきていた少年探偵として知られる小松良夫少年。二人はあるとき近所にある名古伝屋敷の不思議な噂を耳にする。
その家にかつて住んでいた名古屋博士が亡くなったとき、博士は自分の体がミイラになるよう、自分で発見した金属で作った棺に入れられたのだという。そして遺言によって、二十五年後に棺を開け、ミイラになっているかどうか確認してくれと書き残したのだ。その二十五年後がちょうど今年なのである。
その遺言が現実のものとなったのか、二人の前にはミイラ男が出没し、怪奇な事件が起こってゆく……。

『都会の怪獣』の二年後に書かれた作品だが、そこまで上手くなったという感じはないかな(苦笑)。
問題はやはりストーリーの荒さにあって、特に前半は何が起こっているのかさっぱりわからないまま次々と派手な事件が起こるので、余計に混乱しがちである。これも月刊誌連載ということで、興味を持続させるための方策だとは思うのだが、逆に月刊誌連載ゆえこれまでのストーリーをきちんと理解することが必要なわけで、子供たちには少々ハードルが高かったのではないだろうか。いや、それでも娯楽が少ない時代のこと、当時の子供たちは繰り返し前の号も読んでいた可能性もあるけれども。
ただ、そういう欠点や、その他ツッコミどころも多々あるけれど、熱量は高いし、注目すべき点もある。
たとえば本作最大のギミック、ミイラ男の存在だが、これが途中から二人になるアイデアは面白い。重要な登場人物の偽物が登場するなんてパターンは割とよくあるけれども、よりによって怪人の本物と偽物が出るというのはもしかすると初めて読んだかも。
ちなみに本作の主人公・小松良夫少年だが、彼は『都会の怪獣』にも登場しており、いわばシリーズ作品のようだ。ほかにも小松良夫の登場する作品はあるのだろうか。
こんな話。春休みを利用し、友人の林君とともに市川の別荘へ遊びにきていた少年探偵として知られる小松良夫少年。二人はあるとき近所にある名古伝屋敷の不思議な噂を耳にする。
その家にかつて住んでいた名古屋博士が亡くなったとき、博士は自分の体がミイラになるよう、自分で発見した金属で作った棺に入れられたのだという。そして遺言によって、二十五年後に棺を開け、ミイラになっているかどうか確認してくれと書き残したのだ。その二十五年後がちょうど今年なのである。
その遺言が現実のものとなったのか、二人の前にはミイラ男が出没し、怪奇な事件が起こってゆく……。

『都会の怪獣』の二年後に書かれた作品だが、そこまで上手くなったという感じはないかな(苦笑)。
問題はやはりストーリーの荒さにあって、特に前半は何が起こっているのかさっぱりわからないまま次々と派手な事件が起こるので、余計に混乱しがちである。これも月刊誌連載ということで、興味を持続させるための方策だとは思うのだが、逆に月刊誌連載ゆえこれまでのストーリーをきちんと理解することが必要なわけで、子供たちには少々ハードルが高かったのではないだろうか。いや、それでも娯楽が少ない時代のこと、当時の子供たちは繰り返し前の号も読んでいた可能性もあるけれども。
ただ、そういう欠点や、その他ツッコミどころも多々あるけれど、熱量は高いし、注目すべき点もある。
たとえば本作最大のギミック、ミイラ男の存在だが、これが途中から二人になるアイデアは面白い。重要な登場人物の偽物が登場するなんてパターンは割とよくあるけれども、よりによって怪人の本物と偽物が出るというのはもしかすると初めて読んだかも。
ちなみに本作の主人公・小松良夫少年だが、彼は『都会の怪獣』にも登場しており、いわばシリーズ作品のようだ。ほかにも小松良夫の登場する作品はあるのだろうか。
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あ、ほんとだ。お恥ずかしい(笑)。
いつの間にか昭和三十年が西暦の1930年に脳内変換してしまったようです。