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久生十蘭『平賀源内捕物帳』(朝日文芸文庫)
平賀源内といえば、江戸時代にエレキテルを作ったことで知られているが、それ以外にも西欧の技術や文化を紹介するなど、幅広い活躍を見せた人物だ。その博覧強記ぶりで当代きっての天才とも言われたが、その実、失敗も多く、後世にその功績が活かされているかというとかなり疑問符がつくらしい。面白いのは「土用の丑の日に鰻を食べる」という風習も平賀源内が考えたという説。これは売上不振に悩む鰻屋に頼まれ、源内が考案したというのだから、今で言うキャッチコピーみたいなものだろう。かように何かと個性的な人物だった源内だが、その言動もかなり突飛だったらしく今では偉人というより奇人としての評価も強いようだ。
本日の読了本は、その平賀源内に探偵役をやらせた、久生十蘭の『平賀源内捕物帖』である。「平賀源内という元々の素材がよいうえに、源内の個性にうまくマッチした謎やギミックを用いているところが流石。当時の風物詩を楽しむのも捕物帖の楽しみの一つであろうが、様々な西欧文化が物語の一角を占めることによって、他の捕物帖とはひと味違った面白みが生まれている。また、それに呼応するかのように、謎の一つひとつもケレン味たっぷりで非常に魅力的。ただし他の捕物帳同様、謎解きに関してはそれほどロジカルとは言えない。
あと、忘れてはならないのが、流れるような威勢のよい文体。講談調とでもいうのか、非常によいテンポで繰り出され、読んでいて非常に心地よい。
結論としては大変満足のいく一冊。著者のもうひとつの捕物帖『顎十郎捕物帖』は本作以上に評価の高い作品なので、こちらもそのうち読んでみよう。
本日の読了本は、その平賀源内に探偵役をやらせた、久生十蘭の『平賀源内捕物帖』である。「平賀源内という元々の素材がよいうえに、源内の個性にうまくマッチした謎やギミックを用いているところが流石。当時の風物詩を楽しむのも捕物帖の楽しみの一つであろうが、様々な西欧文化が物語の一角を占めることによって、他の捕物帖とはひと味違った面白みが生まれている。また、それに呼応するかのように、謎の一つひとつもケレン味たっぷりで非常に魅力的。ただし他の捕物帳同様、謎解きに関してはそれほどロジカルとは言えない。
あと、忘れてはならないのが、流れるような威勢のよい文体。講談調とでもいうのか、非常によいテンポで繰り出され、読んでいて非常に心地よい。
結論としては大変満足のいく一冊。著者のもうひとつの捕物帖『顎十郎捕物帖』は本作以上に評価の高い作品なので、こちらもそのうち読んでみよう。
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