- Date: Sun 21 07 2019
- Category: 国内作家 河野典生
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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河野典生『緑の時代』(角川文庫)
河野典生の『緑の時代』を読む。先日読んだハードボイルド短編集『陽光の下、若者は死ぬ』とは打って変わって、こちらは幻想小説系の短編集。まずは収録作。
第一部 幻の世界
「子供の情景」
「パストラル」
「グリーン・ピース」
「淡彩画」
「見知らぬ町」
「アイ・アイ」
「赤い服のジャンヌ」
「緑の時代」
第二部 現代の童話
「ピノキオ」
「蟻」
「月球儀くん」
「完全な女」
「ジャリ・タレント」
「宮益坂上歩道橋」
第三部 未来への旅
「美しい芸術」
「性的な時代」
「微妙な味」
「穏やかな日々」
「機関車、草原に」

河野典生の幻想系の代表作としてよく挙げられる本書だが、確かにこれはいい。
もともとハードボイルドならではの簡潔な文体だが、それは幻想小説でも非常に活かされている。もちろんハードボイルドと幻想小説ではまったく設定が異なるし、まるっきり同じような文体というわけではないのだが、根っこにあるものは意外に共通というか。シンプルだけれど詩情性にあふれ、読者に世界をイメージさせやすい文章なのである。
ともするとその美文のせいで、一見センスありきで書かれたような感じも受けるが、その実、文章のみならずプロットも練られている印象である。つまりは完成度が高いということなのだろう。
本書では大きく三つのテーマに分けられているが、強いていえば未来的なものを扱うよりは、日常からふとしたことで異世界に足を踏み入れるような系統の「第一部 幻の世界」が好み。河野典生の作品は実際の地名をガンガン盛り込んでくるが、今読むとそれが大きくノスタルジーを醸し出して、よりファンタジックな雰囲気を濃くしている。
もちろん当時の著者にそういう意図はなかったと思うが、表題作「緑の時代」などはその代表ともいえる作品だろう。“緑”によって失われてゆく(そして生まれてくる)世界の舞台がもし新宿ではなく架空の地であったら、ここまでしびれる作品にはならなかったかもしれない。
第一部 幻の世界
「子供の情景」
「パストラル」
「グリーン・ピース」
「淡彩画」
「見知らぬ町」
「アイ・アイ」
「赤い服のジャンヌ」
「緑の時代」
第二部 現代の童話
「ピノキオ」
「蟻」
「月球儀くん」
「完全な女」
「ジャリ・タレント」
「宮益坂上歩道橋」
第三部 未来への旅
「美しい芸術」
「性的な時代」
「微妙な味」
「穏やかな日々」
「機関車、草原に」

河野典生の幻想系の代表作としてよく挙げられる本書だが、確かにこれはいい。
もともとハードボイルドならではの簡潔な文体だが、それは幻想小説でも非常に活かされている。もちろんハードボイルドと幻想小説ではまったく設定が異なるし、まるっきり同じような文体というわけではないのだが、根っこにあるものは意外に共通というか。シンプルだけれど詩情性にあふれ、読者に世界をイメージさせやすい文章なのである。
ともするとその美文のせいで、一見センスありきで書かれたような感じも受けるが、その実、文章のみならずプロットも練られている印象である。つまりは完成度が高いということなのだろう。
本書では大きく三つのテーマに分けられているが、強いていえば未来的なものを扱うよりは、日常からふとしたことで異世界に足を踏み入れるような系統の「第一部 幻の世界」が好み。河野典生の作品は実際の地名をガンガン盛り込んでくるが、今読むとそれが大きくノスタルジーを醸し出して、よりファンタジックな雰囲気を濃くしている。
もちろん当時の著者にそういう意図はなかったと思うが、表題作「緑の時代」などはその代表ともいえる作品だろう。“緑”によって失われてゆく(そして生まれてくる)世界の舞台がもし新宿ではなく架空の地であったら、ここまでしびれる作品にはならなかったかもしれない。
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これはまた気になるコメンを、どうもありがとうございます。ううむ、そんな傑作をなぜカットしたのか。分量の問題だったのでしょうか。
ともあれ、そこまでプッシュされては読まないわけにいきませんね。また宿題が増えてしまいました。
とはいえ、まずは買うところからになりますが(苦笑)。