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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

エドマンド・クリスピン『大聖堂は大騒ぎ』(国書刊行会)

 ボジョレー・ヌーヴォー解禁。さっそく1本空けてみたが、今年は当たり年という前評判どおり、なかなかさっぱりしていて美味しい。とはいうものの、実はワインの善し悪しというのがもうひとつピンと来ない(笑)。日本酒やビール、ウィスキーなら多少は自信があるのだけれど、なぜかワインは駄目なのだ。もちろん味の好き嫌いはあるのだけれど、それがそのままワインの出来に直結しない。つまり1000円のワインでも大変美味しく飲むこともあれば、5000円のワインでもそれほど美味く感じないこともあるわけ。日本酒ならそんなことはないんだがなぁ。

 エドマンド・クリスピンの『大聖堂は大騒ぎ』を読む。
 こんな話。友人のフェン教授からイギリスの地方都市トールンブリッジに招かれた音楽家のジェフリイ。大聖堂のオルガン奏者が何者かに襲撃されたため、その代わりを務めてほしいという。
 不安を抱えながらもトーンブリッジに出かけようとするジェフリイだが、行く先々で命を狙われ、ようやく到着したトールンブリッジでも次々と事件が勃発。いったいトールンブリッジにはどんな秘密が隠されているというのだろう?

 ウィットの利いた会話やユーモアで彩られた上品な本格ミステリがクリスピンの持ち味だが、本作ではそれに加えて、怪奇趣味やロマンス、不可能犯罪とまさに盛り沢山。だがそのためテイストに統一感が感じられず、はっきりいって大味である。
 また、肝心の謎解き部分もそれほど推理するという見せ場がなく、終盤は事件の方で勝手に転がっていく印象は免れない。とはいえトリックはなかなか奇抜だし、やりすぎと思われるほどの導入部のエピソードなどは個人的には嫌いではない。探偵役のフェン教授のキャラクターも後期のやや落ち着いたそれとは違って、かなりエキセントリックなのもそれはそれで楽しい。
 粗っぽい作品ではあるのだが、そういった部分も含めて、とりあえず本格ファンは読んでおいて損はない作品である。

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Comments
 
ポール・ブリッツさん

客観的には悪い作家ではないと思うので、『愛は血を流して横たわる』も含め、入手できる範囲ではすべて読んできています。ただ、私には何となく相性の悪い作家ですね。『大聖堂は大騒ぎ』は比較的楽しめた記憶があるのですが。
 
クリスピンは好きな作家ですね。
高校のころに「消えた玩具屋」「お楽しみの埋葬」を読んだときは別になんとも思いませんでしたが、後に国書刊行会の「大聖堂は大騒ぎ」と「白鳥の歌」と「愛は血を流して横たわる」をゲラゲラ笑いながら読み、好きな作家の仲間に入れました。
今から再読すればどうなるだろう、と古本屋で前記2冊を探しましたが、すでに入手困難になっており、くそうこんなことなら手放すんじゃなかった、と血涙を流しております(笑)。
クリスピンのギャグはわたしに合うのかなあ。
「愛は血を流して横たわる」はお読みになられましたか? 合わないのなら無理して読むこともない本ですが。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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