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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

横田順彌『古本探偵の冒険』(学陽文庫)

 天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日ということで、今年限りの祝日。ありがたく自宅で休ませていただく。

 で、パラパラと読んでいたのがヨコジュンこと横田順彌の『古本探偵の冒険』。SF作家にとどまらず古典SF研究家、明治文化研究家としての活動でも知られる著者の、〈本の雑誌〉に連載していたエッセイをまとめたものだ。最初は『探書記』という題名で本の雑誌社から刊行され、その後、新たなエッセイが加えられて学陽書房で文庫化されたのが本書。

 古本探偵の冒険

 著者の興味はもともとSFだが、そこから明治や大正の古典SFに広がり、さらには日本SFの父・押川春浪に着目したところ、彼が野球界の発展に貢献したことを知り、その結果、興味対象は日本野球どころか明治文化史にまで広がってゆく。
 本書はその研究のための資料収集に関するエッセイ集、いや、早い話がいわゆる古本エッセイである(笑)。
 管理人の守備範囲は探偵小説なので、SFや明治史はその延長線上の興味になってしまうのだが、それでも本書に取り上げられている珍本・奇本の数々は実に面白そうだし、それ以上に、その本に関する周辺情報や入手にまつわるエピソードなどが実に楽しく、読んでいてまったく飽きない。
 古本収集のエッセイ集というのは今も昔も意外に多いのだけれど、本書のようにギャグや自虐的な笑いを盛り込んだタイプは、もしかするとヨコジュンが元祖なのではないか(確かめたわけではないけれど)。

 ちなみに横田順彌は今年の1月4日に亡くなったのだが、昨日、漫画家の吾妻ひでお氏の訃報が出てことにも驚いた。いろいろあった人だが、やはり六十九歳はちょっと早い。今年は海外でもジーン・ウルフが亡くなったし、SF関係の悲しいニュースが多いなぁ。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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