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 陳浩基の『ディオゲネス変奏曲』を読む。『13・67』を読んだときの衝撃はいまだ忘れられないが、その著者の自選短編集となるのが本書である。まずは収録作。

「藍(あお)を見つめる藍(あお)」
「サンタクロース殺し」
「頭頂」
「時は金なり」
「習作 一」
「作家デビュー殺人事件」
「沈黙は必要だ」
「今年の大晦日は、ひときわ寒かった」
「カーラ星第九号事件」
「いとしのエリー」
「習作 二」
「珈琲と煙草」
「姉妹」
「悪魔団殺(怪)人事件」
「霊視」
「習作 三」
「見えないX」

 ディオゲネス変奏曲

 おお、これは愉しい短編集だ。ただ、その味わいは『13・67』とずいぶん異なっている。
 『13・67』が香港を舞台にした濃密な警察小説、しかも本格ミステリ要素も強く、その試みも実にアバンギャルドであったのに対し、本書の場合、そういった文学的な深度とは距離を置き、あくまでアイディア勝負の作品ばかりを並べている印象である。内容もミステリからホラー、SFと幅広く、どれもきっちりオチをつけている。そういう意味では基本的にわかりやすく、ゲーム的であり、気軽に楽しめる作品ばかりといえるだろう。

 しかし、単にエンタメ一本やりの短編集かというと、それもちょっと違う。著者はそういうスタイルをとることで、著者の思考や考え方をプレゼンしているような印象も受ける。本書には「著者あとがき」がついており、そこで著者自ら全作解題を書いているのだが、これもその意を強くしている。だから、そういう意味では実はきわめて実験的作品集ともいえるのではないか(ちょっと強引)。

 印象に残った作品は、まず巻頭の「藍(あお)を見つめる藍(あお)」。ITを駆使したサイコスリラーと思わせておいて、こういう捻りで落とすとは。これで掴みはOK。
 「時は金なり」は時間の売買というテーマで、皮肉なラストを用意し、現代の寓話として面白い。
 「カーラ星第九号事件」はSFミステリの秀作。探偵デュパパンという登場人物、全体の結構などから、ミステリのパロディというふうにもとれる。
 「珈琲と煙草」も嫌いではない。こういうアイディアは誰でも思いつきそうだが、逆にこうしてきちんとまとめた例はあまり記憶がない。
 怪作ナンバーワンが「悪魔団殺(怪)人事件」。悪の組織、たとえば仮面ライダーにおけるショッカーの「ような組織内で起こった殺人事件を解決する本格ミステリ。このネタを外国人に書かれたことが悔しい(笑)。しかもよくできている。
 掉尾を飾る「見えないX」が本作のベストか。大学のある授業として行われた擬似ミステリという設定がまず秀逸。ミステリやロジックの意味をあらためて問いかけるような内容もいいし、日本のサブカルチャー目白押しな遊びも楽しい。

 ということで、なかには他愛ない作品も多少あるけれど、実に愉しい一冊でありました。おすすめ。
 
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テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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