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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

大下宇陀児『火傷をした楠田匡介』(湘南探偵倶楽部)

 湘南探偵倶楽部さんが発行している「知られざる短編」シリーズから、大下宇陀児『火傷をした楠田匡介』を読む。楠田匡介のペンネームの由来となった、『新青年』での六人の作家による競作連載『楠田匡介の悪党振り』のうちの一篇である。

 こんな話。楠田匡介が目覚めるとそこは病院であった。斯波(しは)準一と組んで花火の闇製造販売を行っていた二人だが、宿での作業中に誤って失火してしまい、大火傷で二人とも病院に運ばれていたのだ。ただ、楠田は運良く顔に火傷を負った程度だったが、斯波は全身に大火傷を負って命も危ない状態だという。
 ところが顔も包帯だらけのせいか、どうやら医師や看護婦らは二人を取り違えている。そこで楠田はふとあることを思いつく。斯波が日頃から大金を持ち歩いていることを知っていた楠田は、それを自分のものにしようと、あえて自分が斯波のままでいようと企んだのだ。しかし……。

 火傷をした楠田匡介

 まあ、他愛ないといえば他愛ない話ではある。主人公としては機転を利かせた入れ替わりトリックだったが、それが予想外の展開をみせて、最後は思いもよらない結末が……という一席。
 『楠田匡介の悪党振り』といいながら、本作の楠田は絵に描いたような小物っぷりで、そんな愛すべき犯罪者をコミカルに描きつつ、オチも決めてきれいにまとめている。まるで落語にでもありそうな話で、まずまず楽しく読める。

 ちなみに『楠田匡介の悪党振り』には、宇陀児のほかに水谷準「笑ふ楠田匡介」、妹尾アキ夫「人肉の腸詰(ソ-セイジ)」、角田喜久雄「流れ三つ星」、山本禾太郎「一枚の地図」、延原謙「唄ふ楠田匡介」という作品がある。
 まあ、ぜがひでもというほどではないが、残りも読めるなら読んでみたいなぁと少し調べてみたところ、どうやら現在入手可能なものとしては、「人間の腸詰」が論創ミステリ叢書『妹尾アキ夫探偵小説選』に、「一枚の地図」が同じく論創ミステリ叢書の『山本禾太郎探偵小説選I』に収録されていることを突き止める。
 ううむ、突き止めたのはいいが、すでに二作とも読んでいるではないか(苦笑)。恥ずかしながら全然覚えていなかった。
 さらに調べを進めると、今度は春陽堂書店が1994年に復刻した『創作探偵小説選集 第3輯』にシリーズ六作がまるまる収録されていることも判明。念のため自分の蔵書リストをチェックすると、案の定、こちらもすでに二十年ほど前に自分で買っていたわけだが(トホホ)。
 せっかくなので、こちらの感想も気が向いたらそのうちに。
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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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