- Date: Sat 28 12 2019
- Category: 海外作家 ブロック(ローレンス)
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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ローレンス・ブロック『泥棒はスプーンを数える』(集英社文庫)
昨日が仕事納めで本日より九連休。久しぶりの長い休みで、それはそれで嬉しいのだけれど、けっこう昨日も仕事がいっぱいいっぱいで気になることが山積み。鬱々と休みに突入しつつ、本日はとりあえず大掃除で体を動かしてなるべく頭を使わないようにする。そしてもちろん読書。
ローレンス・ブロックの『泥棒はスプーンを数える』を読む。
こんな話。古書店を営みながら泥棒稼業にも精を出すバーニイ・ローデンバー。彼の元へスミスと名乗る男が現れ、博物館からフィッツジェラルドの生原稿を盗んでほしいと依頼される。難なくその仕事をこなすと、その依頼人からまたしても次の依頼が。ただし、その難度は非常に高く、一度はあきらめかけたバーニイだったが……。
そんなおり、バーニイの元へ今度はニューヨーク市警のレイ刑事が現れた。こちらはある老婦人の殺害事件の捜査に協力してほしいというものだった。

本作はいまのところ泥棒バーニイ・ローデンバー・シリーズ最後の作品である。また、これが管理人にとって唯一の未読ブロック作品なので、これまでもったいなくて読まずにとっておいたのだが、ついに欲望に負けて読んでしまった。
もちろんその期待は裏切られることなく、ブロックの語りを十分堪能できた。
もともとローレンス・ブロックはストーリーの面白さよりも、その語りの巧さを評価されてきた作家である。晩年の作品は特にそれが顕著で、基本的にストーリーはそれほど大したことがなく、バーニイの語りやレギュラーたちの会話が読みどころといってよい。
ただ、語りの巧さにもいろいろある。格調高い美文とか技巧を尽くした文体とか味わい深い文章とか。ブロックのそれはユーモアに彩られた含蓄のある文章とでもいおうか。酒場や書店で繰り広げられる何気ない会話のなかに、思わずニヤッとする真理が隠されていたりする。その語りに身を委ねるかのように読む。これがブロックの最近の作品を楽しむコツだろう。
ユーモアの度合いは異なるが、これはアル中探偵マット・スカダーものや殺し屋ケラーものでも同様。しかし、その魅力がもっとも発揮されるのは、何といってもバーニイ・ローデンバー・シリーズであり、古書店という設定ゆえの文学ネタなどが豊富に盛り込まれているのもより効果をあげている。本作でもフィッツジェラルドやマイクル・コナリーなど、ここかしこに実在の作家名を出しており実に楽しい。
まあ、ストーリーありきで読む読者には物足りないところはあるだろうが、それでもラストの関係者全員を集めての謎解きシーンやどんでん返しはお見事で、さすが巨匠の筆は冴えている。
ちなみに現時点で本作はバーニイ・ローデンバー・シリーズの最後の作品だが、どうやら来年には本国で短編集が出るようで、これはぜひ邦訳が出てほしいものだ。
ローレンス・ブロックの『泥棒はスプーンを数える』を読む。
こんな話。古書店を営みながら泥棒稼業にも精を出すバーニイ・ローデンバー。彼の元へスミスと名乗る男が現れ、博物館からフィッツジェラルドの生原稿を盗んでほしいと依頼される。難なくその仕事をこなすと、その依頼人からまたしても次の依頼が。ただし、その難度は非常に高く、一度はあきらめかけたバーニイだったが……。
そんなおり、バーニイの元へ今度はニューヨーク市警のレイ刑事が現れた。こちらはある老婦人の殺害事件の捜査に協力してほしいというものだった。

本作はいまのところ泥棒バーニイ・ローデンバー・シリーズ最後の作品である。また、これが管理人にとって唯一の未読ブロック作品なので、これまでもったいなくて読まずにとっておいたのだが、ついに欲望に負けて読んでしまった。
もちろんその期待は裏切られることなく、ブロックの語りを十分堪能できた。
もともとローレンス・ブロックはストーリーの面白さよりも、その語りの巧さを評価されてきた作家である。晩年の作品は特にそれが顕著で、基本的にストーリーはそれほど大したことがなく、バーニイの語りやレギュラーたちの会話が読みどころといってよい。
ただ、語りの巧さにもいろいろある。格調高い美文とか技巧を尽くした文体とか味わい深い文章とか。ブロックのそれはユーモアに彩られた含蓄のある文章とでもいおうか。酒場や書店で繰り広げられる何気ない会話のなかに、思わずニヤッとする真理が隠されていたりする。その語りに身を委ねるかのように読む。これがブロックの最近の作品を楽しむコツだろう。
ユーモアの度合いは異なるが、これはアル中探偵マット・スカダーものや殺し屋ケラーものでも同様。しかし、その魅力がもっとも発揮されるのは、何といってもバーニイ・ローデンバー・シリーズであり、古書店という設定ゆえの文学ネタなどが豊富に盛り込まれているのもより効果をあげている。本作でもフィッツジェラルドやマイクル・コナリーなど、ここかしこに実在の作家名を出しており実に楽しい。
まあ、ストーリーありきで読む読者には物足りないところはあるだろうが、それでもラストの関係者全員を集めての謎解きシーンやどんでん返しはお見事で、さすが巨匠の筆は冴えている。
ちなみに現時点で本作はバーニイ・ローデンバー・シリーズの最後の作品だが、どうやら来年には本国で短編集が出るようで、これはぜひ邦訳が出てほしいものだ。
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海外のミステリサイトに載ってました。最新作というよりバーニイものの過去の短編をまとめたもののようで、未発表作品とかもあるようですよ。
早川でも集英社でも二見でも、どこでもいいから出してほしいものです。