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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


大阪圭吉『砂漠の伏魔殿 大阪圭吉単行本未収録作品集3』(盛林堂ミステリアス文庫)

 今月はプライベートでも仕事でもいろいろと大きな出来事があって、なかなか心身ともに休まらない。今日などは久々にゆっくりできたはできたのだが、今週も大きな会議やら接待やら、おまけに関西出張まであって、まことに忙しないかぎり。もうしばらくは我慢である。

 そんな状況にあっても、とりあえず本は読む。本日の読了本は『砂漠の伏魔殿 大阪圭吉単行本未収録作品集2』。盛林堂が進めている大阪圭吉の単行本未収録作品集の一冊である。収録作は以下のとおり。

「花嫁の塑像」
「氷」
「沙漠の伏魔殿」
「人外神秘境」
「主なき貯金」
「現代小説 山は微笑む」
「濱田彌兵衛」
「創作喜劇台本 軍事郵便(一幕)」
「エッセイ・ハガキ回答・アンケート」

 砂漠の伏魔殿

 比較的、軽い作品が多いのは一巻や二巻と同様である。拾遺集的なシリーズなので、それは致し方ないところだが、それでも歴史ものや秘境もの、コントに戯曲まであるのは要注目。つい十年ほど前はここまで作風に幅がある作家だとはマニアでもあまり認識していなかったはずで、そういう作品が読めるだけでもありがたい。

 個人的に気に入ったものは「氷」や「主なき貯金」、「現代小説 山は微笑む」といったところか。
 「氷」は掌編レベルのボリュームで、一歩間違えればコントやホラーになりそうなところを、なんとも言いようのない複雑な読後感で着地させてくれる。「主なき貯金」も掌編レベルだが、この枚数で人間の割り切れない心について考えさせてくれるところがさすが。
 「現代小説 山は微笑む」は炭鉱を舞台にした小説で、大阪圭吉作品で炭鉱といえば、当然すぐに「坑鬼」を連想するだろうが、こちらはそれとは真逆の明朗小説の世界である。それだけにオチも予想しやすいが、まあ楽しいからいいやね。

 なお、本書発行人である小野氏の「あとがきにかえて」が巻末にあるのだが、これがけっこう見逃せない。内容としては大阪圭吉のご親族訪問記で、本書に収録している作品の発見された背景などが記されているなど、非常にドキュメンタリーちっく。実はこれが一番面白かった(笑)。

 ちなみに本書はまだ盛林堂さんの通販で買えるようです。
http://seirindousyobou.cart.fc2.com/ca1/550/p-r-s/
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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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