- Date: Sun 22 03 2020
- Category: 評論・エッセイ エドワーズ(マーティン)
- Community: テーマ "評論集" ジャンル "本・雑誌"
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マーティン・エドワーズ『探偵小説の黄金時代』(国書刊行会)
三連休というわけだが、新型コロナウィルスの影響やカミさんが実家へ帰っていることもあって、特に遠出することもなく。もっぱら仕事の調べ物をしたり、気になる作家の情報を集めたり、駅前の桜並木を見物にいったり、近場へ古本を買いにいったり、家の本を片付けたりして過ごす。それほど本を読めていないのはよくある話(笑)。
それでもぼちぼち読み進めてきたノンフィクション『探偵小説の黄金時代』をようやく読了する。
1930年、チェスタトンを会長として発足した英国ミステリ作家の親睦団体〈ディテクション・クラブ〉の歴史を軸に、作家たちの交流や活動を描いた大著である。
著者はミステリ作家のマーティン・エドワーズで、日本ではあまり知られていないが、ディテクション・クラブや英国推理作家協会の会長も務める人物。会長就任以前から両団体で公文書保管役も務めていたということで、まさに本書を書くにあたってはうってつけの人物である。ただ、そういう経歴なのでてっきり英国ミステリ界の重鎮的存在だろうと想像していたのだが、なんとまだ(2020年3月時点で)六十五歳という若さである。六十五歳が若いかどうかは異論があるだろうが(苦笑)、そういう立場の人としては、ということでご了承くだされ。
※なお、マーティン・エドワーズについては海外クラシックミステリの同人誌「Re-ClaM」の第1号に詳しい。興味ある方はネットで検索してみてください。BOOTHでは電子版も発売されているようです。

とにかく面白い。数々の文献やインタビューによって当時を再構築しているのだが、一人の作家の伝記を書くだけでも大変だろうに、本書は複数の作家を扱うばかりかディテクション・クラブという組織にスポットを当てているわけだから、その労力たるや。
海外のクラシックミステリ好きならディテクション・クラブという存在ぐらいは知っているだろうが、それが実際のところどのような活動をしているのか、そこまで把握している人はそもそも少ないだろう。本作はそんな知っていそうで知らないディテクション・クラブの誕生前夜から黄金時代にかけての歴史を紐解いており、非常に興味深い。
しかし、実はそれにも増して面白いのが、作家たちの交流やゴシップである。
著名なミステリ作家なら伝記や評伝なども出版されており、その作家の生涯や作品の評価は知ることができるが、それらはいわば縦軸によるアプローチだ。本書ではそういった評伝だけではあまり知ることのできない作家同士の横への展開も多く語られており、それらのエピソードが作品に与える影響もフォローするなど、立体的な理解を得ることができるのが大きなポイントだ。
内容が膨大なのでざくっとしか紹介できないけれど、当時の英国の時代背景、社会問題等がミステリに大きな影響を与えていることも再確認できるし、面白くてためになる一冊とはこういう本をいうのだろう。海外のクラシックミステリファンには、オススメを通り越して、もはや必携といってよい。
それでもぼちぼち読み進めてきたノンフィクション『探偵小説の黄金時代』をようやく読了する。
1930年、チェスタトンを会長として発足した英国ミステリ作家の親睦団体〈ディテクション・クラブ〉の歴史を軸に、作家たちの交流や活動を描いた大著である。
著者はミステリ作家のマーティン・エドワーズで、日本ではあまり知られていないが、ディテクション・クラブや英国推理作家協会の会長も務める人物。会長就任以前から両団体で公文書保管役も務めていたということで、まさに本書を書くにあたってはうってつけの人物である。ただ、そういう経歴なのでてっきり英国ミステリ界の重鎮的存在だろうと想像していたのだが、なんとまだ(2020年3月時点で)六十五歳という若さである。六十五歳が若いかどうかは異論があるだろうが(苦笑)、そういう立場の人としては、ということでご了承くだされ。
※なお、マーティン・エドワーズについては海外クラシックミステリの同人誌「Re-ClaM」の第1号に詳しい。興味ある方はネットで検索してみてください。BOOTHでは電子版も発売されているようです。

とにかく面白い。数々の文献やインタビューによって当時を再構築しているのだが、一人の作家の伝記を書くだけでも大変だろうに、本書は複数の作家を扱うばかりかディテクション・クラブという組織にスポットを当てているわけだから、その労力たるや。
海外のクラシックミステリ好きならディテクション・クラブという存在ぐらいは知っているだろうが、それが実際のところどのような活動をしているのか、そこまで把握している人はそもそも少ないだろう。本作はそんな知っていそうで知らないディテクション・クラブの誕生前夜から黄金時代にかけての歴史を紐解いており、非常に興味深い。
しかし、実はそれにも増して面白いのが、作家たちの交流やゴシップである。
著名なミステリ作家なら伝記や評伝なども出版されており、その作家の生涯や作品の評価は知ることができるが、それらはいわば縦軸によるアプローチだ。本書ではそういった評伝だけではあまり知ることのできない作家同士の横への展開も多く語られており、それらのエピソードが作品に与える影響もフォローするなど、立体的な理解を得ることができるのが大きなポイントだ。
内容が膨大なのでざくっとしか紹介できないけれど、当時の英国の時代背景、社会問題等がミステリに大きな影響を与えていることも再確認できるし、面白くてためになる一冊とはこういう本をいうのだろう。海外のクラシックミステリファンには、オススメを通り越して、もはや必携といってよい。
私はわからない言葉があると、けっこうすぐに調べるタイプでして、電車で読んでいても即座にスマホで調べたりします。
ただ、ネットがない時代はとにかくイライラしましたね。意味がわからないのはまだ我慢できましたけど、漢字の読みがわからないときはいつも悶えてました(笑)。
それはともかく、間違いなく「とにかく買え」な本です。