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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

オースティン・フリーマン『盗まれた金塊』(湘南探偵倶楽部)

 湘南探偵倶楽部さんが復刻している「知られざる短篇」シリーズからオースティン・フリーマンの『盗まれた金塊』を読む。かつて改造社が刊行した『世界大衆文学全集60 ソーンダイク博士』に収録された短編で、現状ではそこそこレアな一作。とはいえ国書刊行会から『ソーンダイク博士短編全集』が出れば新訳で読めるのだから、これで無理に読む必要はないのだけれど、まあ、当時の翻訳の雰囲気も気になって読んでみた次第。

 盗まれた金塊

 ソーンダイク博士のもとに保険会社の重役が訪ねてきた。アフリカの採金会社から英国の宝石会社ミントン・ボウエル商会に送られた金塊の詰められた箱の中身が、いつのまにか鉛管にすり替わっていたのだという。金塊の箱は港から汽車に積まれたが、直行便がないため、ある小さな駅で積み替えのため一時保管していたとのこと。警察の話では、その駅ですり替えが行われたということだが……。

 事件そのものにそれほど面白みはなく、トリックも今となってはさすがに古臭いけれど、それを見破るソーンダイク博士の着眼点がよく、そこからの推理もいつもどおり論理的、科学的で本格の楽しさは満喫できる。ソーンダイクが冒頭で「人の話には主観が入るから、それを鵜呑みにしてはいけない。事実をしっかり量ることが大切だ」というような意味のことを言うのだけれど、まさにそれを実践した内容である。途中で船による追跡劇もあり、これもただの味つけに終わらせていなのが心憎い。
 ちなみにトリックが古臭いと書いたけれど、これ、子供向けの推理クイズとかでよく使われたネタであり、その先鞭をつけたというのであれば、むしろ、さすがオースティン・フリーマンというべきであろう。まあ、確かめたわけではないので、本作が二番煎じの可能性もあるけれど(笑)。
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Comments
 
ポール・ブリッツさん

堺雅人が殺し屋とかに間違われちゃう映画でしたっけ。基本的にコメディだと思っていたのですが、ミステリとして楽しめるんですね。ぜひ今度見てみます。
 
個人的には映像ミステリでは「鍵泥棒のメソッド」を推します……。内容を話してはいかんタイプの映画なので、まあ見てください、としかいえぬ。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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