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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

ミステリー文学資料館/編『甲賀三郎 大阪圭吉 ミステリー・レガシー』(光文社文庫)

 『大阪圭吉自筆資料集成』を読んだら、大阪圭吉の本格系作品を久しぶりに読みたくなって『甲賀三郎 大阪圭吉 ミステリー・レガシー』を手に取ってみた。
 「ミステリー・レガシー」はアンソロジーのシリーズ名というかサブタイトルというか、あまりはっきりしないのだが、要は関連性のある戦前探偵小説作家の作品をペアで紹介しようという試みである。刊行ペースはゆっくりしたものだが、2020年5月現在で一応四冊ほど出ており、本書はその二番目に出た作品集。
 甲賀三郎と大阪圭吉のつながりは、戦前に珍しい本格縛り、また、大阪のデビューにあたって甲賀がサポートしたという縁が元になっている。

 甲賀三郎大阪圭吉ミステリーレガシー

【甲賀三郎】
「琥珀のパイプ」
「歪んだ顔」
「随筆」探偵小説家の製作室から/探偵小説の将来/探偵小説界の現状

【大阪圭吉】
『死の快走船』
「序」江戸川乱歩
「大阪圭吉のユニクさ」甲賀三郎
「死の快走船」
「とむらい機関車」
「雪解」
「デパートの絞刑吏」
「気狂い機関車」
「なこうど名探偵」
「人喰い風呂」
「花束の虫」
「石掘幽霊」
「燈台鬼」
「巻末に」

 収録作は以上。甲賀三郎の「琥珀のパイプ」は比較的知られた作品だが、「歪んだ顔」は古書でないと入手できないレア作品で、おそらく本書の目玉作品といえるだろう。
 どちらも甲賀ならではの理系トリックを盛り込んだ本格作品で、ぶっちゃけ、いろいろと無理があって出来そのものは落ちるけれども(特に「歪んだ顔」)、どんでん返しの多さや趣向の面白さなどサービス精神に溢れていて、決して嫌いではない。

 一方の大阪圭吉パートは短編集『死の快走船』を丸ごと収録している。ただ、収録作はすべて創元推理文庫、国書刊行会、戎光祥出版のミステリ珍本全集等、過去の作品集で読むことができ、それらをすでに持っている人にとってはコスパは高くない。
 とはいえネットで見るかぎり、すでに品切れのものも多いようなので、初めて大阪作品を読もうという人にはありがたい一冊となるだろう。まあ、マニア諸氏にしても乱歩の序文や甲賀三郎の解説も含めた『死の快走船』完全版として読めるのは嬉しいところではないだろうか。
 中身については、以前に書いたものがあるのでそちらをご覧くだされ(『とむらい機関車』『銀座幽霊』『死の快走船』)。

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Comments
 
ハヤシさん

戦争がなければ探偵小説界全体もまた違った発展をしたように思いますし、その中で大阪圭吉も大きな役割を担ったかもしれませんね。
ちなみに私も「坑鬼」は大阪圭吉の中では最も好きな作品です。
 
大阪圭吉は「坑鬼」のサスペンス醸成の巧みさを省みても十分長編を成功させる筆力があったと思われます。ユーモア物のペーソスやスパイ物の巧みさも捨てがたい。戦争とは全く愚かなものです。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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