- Date: Sat 13 06 2020
- Category: 国内作家 筒井康隆
- Community: テーマ "評論集" ジャンル "本・雑誌"
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筒井康隆『筒井康隆、自作を語る』(ハヤカワ文庫)
『筒井康隆、自作を語る』を読む。題名どおり、筒井康隆が自作について語ったインタビュー集である。
もとは出版芸術社の〈筒井康隆コレクション〉刊行を記念し、複数回にまたがって行われたトークショーをまとめたもので(その後『ハヤカワSFマガジン』に掲載)、これに徳間文庫の〈テーマ別自選短篇集〉の巻末に付けられたインタビューを合わせて収録した一冊。
今回の文庫化にあたっては、復刊ドットコムの〈筒井康隆全戯曲集〉の刊行記念インタビューを加えたほか、巻末の著作リストも短編集の収録作も網羅するなど、さらにお得感も増している感じである

中身に関してはもう十分満足。
作品の内容についてはもちろんだが、時代を追って、作品執筆の経緯や当時のSF文壇の様子などもふんだんに語られている。もちろんエッセイも多く書いている筒井のこと、すでに読んだエピソードも多いのだけれど、この期に及んでまだ初出しのネタがあったりして、小説に負けないくらい面白い。
特に編集者から酷評されて、怒って原稿を川に捨てたエピソードは知っていたが、これも話を盛っただけで、実はちゃんととってあるようだ。しかも後に自分で読むと、確かにこれはダメだったとか(苦笑)。
それにしてもよくこれだけ作品のことを憶えているものだと感心する。
家族で作った同人誌〈NULL〉のあたりから話が始まり、その作品が乱歩の目にとまって商業デビューするのだけれど、これが昭和三十年代の頃である。まあ、逆にそういう古い時代のほうがよく憶えているらしいのだけれど、それにしてもついこの前に起こったかのような話しぶりである。
さすがにお年のせいか固有名詞はかなり忘れっぽくなっているようだが(笑)、そういうときは本書の編者でもあるインタビュアーの日下三蔵氏がきっちりフォローを入れてくれている。ちなみに日下氏のそういう下調べというか、丁寧な仕事ぶりはアンソロジーでもよくお目にかかるが、インタビューでも抜かりがないようで、こちらも感心する。
管理人の筒井初体験は確か高校性の頃。角川文庫の『幻想の未来』だったと思うが、それ以来のファンである。ここ数年の新刊はやや追えていないのだが、それでも著作の九割は所持読了済みのはずだ。
初期の作品も好きだが、個人的に特に衝撃だったのは『虚構船団』から始まった一連の実験小説である。同時にエッセイなどでシュールリアリズムやマジックリアリズムの作品の存在を意識するようになり、当時は変な小説ばかり読んでいた気がする。ガルシア=マルケスなんかもそのおかげで読んだんだよなぁ。
ただ本書のインタビューによると、筒井自身のなかでは『虚人たち』で実験小説自体の憑きものが落ちたそうだから恐れ入る。
ともあれ筒井康隆のファンであれば必須の一冊。これを読まない手はありません。最後に個人的に好きな筒井作品をいくつか挙げておこう。どれも傑作です。
『家族八景』
『大いなる助走』
『虚人たち』
『虚航船団』
『文学部唯野教授』
『残像に口紅を』
『夢の木坂分岐点』
『パプリカ』
『富豪刑事』
『ロートレック荘事件』
もとは出版芸術社の〈筒井康隆コレクション〉刊行を記念し、複数回にまたがって行われたトークショーをまとめたもので(その後『ハヤカワSFマガジン』に掲載)、これに徳間文庫の〈テーマ別自選短篇集〉の巻末に付けられたインタビューを合わせて収録した一冊。
今回の文庫化にあたっては、復刊ドットコムの〈筒井康隆全戯曲集〉の刊行記念インタビューを加えたほか、巻末の著作リストも短編集の収録作も網羅するなど、さらにお得感も増している感じである

中身に関してはもう十分満足。
作品の内容についてはもちろんだが、時代を追って、作品執筆の経緯や当時のSF文壇の様子などもふんだんに語られている。もちろんエッセイも多く書いている筒井のこと、すでに読んだエピソードも多いのだけれど、この期に及んでまだ初出しのネタがあったりして、小説に負けないくらい面白い。
特に編集者から酷評されて、怒って原稿を川に捨てたエピソードは知っていたが、これも話を盛っただけで、実はちゃんととってあるようだ。しかも後に自分で読むと、確かにこれはダメだったとか(苦笑)。
それにしてもよくこれだけ作品のことを憶えているものだと感心する。
家族で作った同人誌〈NULL〉のあたりから話が始まり、その作品が乱歩の目にとまって商業デビューするのだけれど、これが昭和三十年代の頃である。まあ、逆にそういう古い時代のほうがよく憶えているらしいのだけれど、それにしてもついこの前に起こったかのような話しぶりである。
さすがにお年のせいか固有名詞はかなり忘れっぽくなっているようだが(笑)、そういうときは本書の編者でもあるインタビュアーの日下三蔵氏がきっちりフォローを入れてくれている。ちなみに日下氏のそういう下調べというか、丁寧な仕事ぶりはアンソロジーでもよくお目にかかるが、インタビューでも抜かりがないようで、こちらも感心する。
管理人の筒井初体験は確か高校性の頃。角川文庫の『幻想の未来』だったと思うが、それ以来のファンである。ここ数年の新刊はやや追えていないのだが、それでも著作の九割は所持読了済みのはずだ。
初期の作品も好きだが、個人的に特に衝撃だったのは『虚構船団』から始まった一連の実験小説である。同時にエッセイなどでシュールリアリズムやマジックリアリズムの作品の存在を意識するようになり、当時は変な小説ばかり読んでいた気がする。ガルシア=マルケスなんかもそのおかげで読んだんだよなぁ。
ただ本書のインタビューによると、筒井自身のなかでは『虚人たち』で実験小説自体の憑きものが落ちたそうだから恐れ入る。
ともあれ筒井康隆のファンであれば必須の一冊。これを読まない手はありません。最後に個人的に好きな筒井作品をいくつか挙げておこう。どれも傑作です。
『家族八景』
『大いなる助走』
『虚人たち』
『虚航船団』
『文学部唯野教授』
『残像に口紅を』
『夢の木坂分岐点』
『パプリカ』
『富豪刑事』
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感想、拝見しました。
筒井さんが確かにすごく楽しそうで、読んでいるこちらも嬉しくなりますね。