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 栗田信の『和製シャーロック・ホームズの冒険 栗田信傑作集 上巻』を読む。あの怪作『発酵人間』復刊で一気に有名になった感もあるとはいえ、基本的には知る人ぞ知るマイナー作家。貸本にも作品を発表していたり、別名義もあったことから、なかなか著作の全貌が掴めないらしい。とにかく予想以上に作品を書いていたことは間違いないようだが、本書はそんな栗田信が雑誌に書き残したままにしていた作品から傑作をセレクトしたもの。いや、傑作集というのはかなり無理がありそうだが(笑)、こうして手軽に読める形にしてくれたことは本当にありがたい。

 栗田信傑作集(上)和製シャーロック・ホームズの冒険

第一部 和製シャーロック・ホームズの冒険
「雷鳥」
「猫と女房と猥談」
「七桁の数字」
「推理小説 凶器貸します」
「内縁の女」

第二部 中州砂六作品集
「モハ305号室の男」
「黒い主題歌(テーマソング)」
「悪夢は三度見る」
「鍾乳洞」
「マドモアゼルの手袋」

第三部 久里恵介作品集
「紳士の身嗜み」
「主役は誰だ!!」
「犬を連れた淑女」
「親孝行」
「潔癖症」
「スタジオの怪 姿なき映像」

第四部 異形の者たち1
「魔海の男 〜『発酵人間』より〜」
「獣鬼の覆面 夜叉反魂香」

 収録作は以上。
 第一部がなんとホームズのパロデイ。和製ホームズの異名を持つ中州砂六(なかす・さろく)を主人公にしたシリーズである。栗田信がホームズのパロディを書いていたというだけで読みたくなることは間違いないが、基本的には通俗スリラーや安手のハードボイルド、もしくは日活アクションもどきといったレベル。一応はホームズのパロディということで著者も気を遣ったのか、作品によっては推理要素を盛り込むなど謎解きの趣向もあるけれど、大きな期待は禁物である。
 第二部はその中州砂六名義で書かれた作品群。とはいえこちらは別にホームズのパロディでも何でもなく、第三部の久里恵介名義の作品も含め、やはり通俗スリラーがほとんどだ。
 本書の白眉は(あくまで個人的な白眉だけれど)なんといっても第四部。なんと「魔海の男 〜『発酵人間』より〜」は『発酵人間』の続編となる短編で、発酵人間の情報を小出しにしたり、その正体を表すシーンなどは見事にツボを押さえていて盛り上がる(笑)。これは明らかに当時のホラー映画やアクション映画、怪獣映画のノリで、長編のときよりも明らかに見せ方が上手くなっている印象だ。こういうのがたまにあるから、やっぱり読まなければいけないという間違った使命感に駆られてしまうんだよなぁ(笑)。
 一般的には絶対に評価されないのだろうが、とりあえず個人的には満足であり、下巻の感想もそのうちに。
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テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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