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連城三紀彦『運命の八分休符』(創元推理文庫)
久々の連城三紀彦である。まだ未読が多いのでもう少しペースをあげたいところだが、最後に読んだのがもう四年前とは嫌になる。その間に新刊もけっこう出ているしなぁ。
だいたい昭和の作家はメジャーどころだけでも多岐川恭や笹沢左保、泡坂妻夫、中町信、松本清張、結城昌治、梶龍雄、陳舜臣、小泉喜美子、土屋隆夫や、天藤真、戸川昌子、中井英夫、西村京太郎、海渡英祐などなど、読みたい作家が目白押しで、うっかりしていると、すぐに何年ぶりとかになってしまう(苦笑)。もちろん当ブログでおなじみの戦前作家や海外のミステリもまだまだ読みたいわけで、もうキリがない。ああ、毎日、本だけ読んで給料もらえないかなぁ〜(ずんの飯尾風に)。
どうでもいい枕を振ったところで『運命の八分休符』である。連城三紀彦には珍しいシリーズ探偵ものの連作短編集で、ユーモアと恋愛要素をふんだんに盛り込んでいるのが特徴だ。まずは収録作。
「運命の八分休符」
「邪悪な羊」
「観客はただ一人」
「紙の鳥は青ざめて」
「濡れた衣装」

探偵役の主人公は田沢軍平という青年。分厚い丸眼鏡をかけ、髪は薄く、がに股で、着ている服はみすぼらしく、おまけに定職にも就かず、安アパートで暮らしている。何もここまでしなくとも、というような設定だが、性格的には極めて繊細で温厚。意外なことに空手という特技もある。
そんな青年がなぜか毎回、美女にモテモテで、難事件も解決するという趣向の連作。恋愛成分がかなり高めで、単品で読むぶんには楽しめるが、同じ主人公で続けて読まされると少々しつこい感じは否めない。個人的には異なる主人公や味つけで読みたかった作品もあるが、まあ、そこは好みの問題か。
ただ、恋愛成分高めとはいえ、ひと皮むけば本格として相当にハイレベルに仕上がっているのは、さすが連城ブランド。その期待は決して裏切られない。
以下、各作品のコメントを。
表題作の「運命の八分休符」は魅力的なアリバイ崩しであるだけでなく、タイトルの意味にやられる。ついでにいえば最初の作品なので、恋愛要素も気にならず、むしろそれ込みで楽しめる。
「邪悪な羊」は見事な誘拐もので、これは後の作品の元になってるのかもしれない。恋愛ものとしてはベタな設定だが、それがまたなかなか染みる。
「観客はただ一人」は、恋多き女優が自分の過去つきあった男たちを集め、一夜限りの自伝的舞台を演じるという導入に魅了される。もちろんその舞台は予想どおり殺人劇となってしまうのだが、最終的にいろいろな意味で反転する構図にやられる。この辺から恋愛要素が鼻につく(笑)。
構図の逆転と叙情性が色濃く出た「紙の鳥は青ざめて」は、地味ながら、ある意味でもっとも著者のよさが出た作品。軍平が男前に脳内変換される(笑)。
“構図の逆転”の安売りはしたくないけれど、これまたそうとしか言いようがない「濡れた衣装」。ミステリとしてはチョイと強引な感じではあるが、昭和の香りを感じられる雰囲気が好きだなぁ。
だいたい昭和の作家はメジャーどころだけでも多岐川恭や笹沢左保、泡坂妻夫、中町信、松本清張、結城昌治、梶龍雄、陳舜臣、小泉喜美子、土屋隆夫や、天藤真、戸川昌子、中井英夫、西村京太郎、海渡英祐などなど、読みたい作家が目白押しで、うっかりしていると、すぐに何年ぶりとかになってしまう(苦笑)。もちろん当ブログでおなじみの戦前作家や海外のミステリもまだまだ読みたいわけで、もうキリがない。ああ、毎日、本だけ読んで給料もらえないかなぁ〜(ずんの飯尾風に)。
どうでもいい枕を振ったところで『運命の八分休符』である。連城三紀彦には珍しいシリーズ探偵ものの連作短編集で、ユーモアと恋愛要素をふんだんに盛り込んでいるのが特徴だ。まずは収録作。
「運命の八分休符」
「邪悪な羊」
「観客はただ一人」
「紙の鳥は青ざめて」
「濡れた衣装」

探偵役の主人公は田沢軍平という青年。分厚い丸眼鏡をかけ、髪は薄く、がに股で、着ている服はみすぼらしく、おまけに定職にも就かず、安アパートで暮らしている。何もここまでしなくとも、というような設定だが、性格的には極めて繊細で温厚。意外なことに空手という特技もある。
そんな青年がなぜか毎回、美女にモテモテで、難事件も解決するという趣向の連作。恋愛成分がかなり高めで、単品で読むぶんには楽しめるが、同じ主人公で続けて読まされると少々しつこい感じは否めない。個人的には異なる主人公や味つけで読みたかった作品もあるが、まあ、そこは好みの問題か。
ただ、恋愛成分高めとはいえ、ひと皮むけば本格として相当にハイレベルに仕上がっているのは、さすが連城ブランド。その期待は決して裏切られない。
以下、各作品のコメントを。
表題作の「運命の八分休符」は魅力的なアリバイ崩しであるだけでなく、タイトルの意味にやられる。ついでにいえば最初の作品なので、恋愛要素も気にならず、むしろそれ込みで楽しめる。
「邪悪な羊」は見事な誘拐もので、これは後の作品の元になってるのかもしれない。恋愛ものとしてはベタな設定だが、それがまたなかなか染みる。
「観客はただ一人」は、恋多き女優が自分の過去つきあった男たちを集め、一夜限りの自伝的舞台を演じるという導入に魅了される。もちろんその舞台は予想どおり殺人劇となってしまうのだが、最終的にいろいろな意味で反転する構図にやられる。この辺から恋愛要素が鼻につく(笑)。
構図の逆転と叙情性が色濃く出た「紙の鳥は青ざめて」は、地味ながら、ある意味でもっとも著者のよさが出た作品。軍平が男前に脳内変換される(笑)。
“構図の逆転”の安売りはしたくないけれど、これまたそうとしか言いようがない「濡れた衣装」。ミステリとしてはチョイと強引な感じではあるが、昭和の香りを感じられる雰囲気が好きだなぁ。
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