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ロバート・ロプレスティ『日曜の午後はミステリ作家とお茶を』(創元推理文庫)
ロバート・ロプレスティの短編集『日曜の午後はミステリ作家とお茶を』を読む。評判がよかったので買ってはみたものの、実はコージーミステリ系があまり得意ではないので後回しにしていた一冊。だが、ここのところ世間でろくなニュースがなく気持ちも沈みがちなので、今ならこういう穏やかなものもいいかなということで読み始める。

Shanks at Lunch「シャンクス、昼食につきあう」
Shanks at the Bar「シャンクスはバーにいる」
Shanks Goes Hollywood「シャンクス、ハリウッドに行く」
Shanks Gets Mugged「シャンクス、強盗にあう」
Shanks on the Prowlシャンクス、物色してまわる」
Shanks Gets Killed「シャンクス、殺される」
Shanks on Misdirection「シャンクスの手口」
Shanks' Ghost Story「シャンクスの怪談」
Shanks' Mare「シャンクスの牝馬(ひんば)」
Shanks for the Memory「シャンクスの記憶」
Shanks Commences「シャンクス、スピーチをする」
Shanks' Ride「シャンクス、タクシーに乗る」
Shanks Holds the Line「シャンクスは電話を切らない」
Shanks Goes Rogue「シャンクス、悪党になる」
レオポルド・ロングシャンクス、通称シャンクスは五十代のミステリ作家。同じく作家の奥様コーラと暮らし、日々の生活に困ることはないけれど、流行作家の道は高く険しい。そんなシャンクスの前にはなぜか事件や謎が多発する。シャンクスは愚痴をこぼしながらも、見事、名探偵よろしく事件を解決に導いていく——。
しいていえば雰囲気としてはアシモフの「黒後家蜘蛛の会」に近いか。ただ、あそこまでパズルに特化しているわけではなく、ミステリとしてのキレ味、サプライズといった部分はそれほどではない。読みどころはやはりキャラクターのやりとりやユーモアの部分で、まあ、これは読む前から予想していたとおりのイメージだ。
そんなわけで基本的に暇つぶし程度の一冊かと思っていたのだが、これが一作、二作と読み進めるうちに、だんだんと面白さが加速し、引き込まれていったから不思議なものだ。
その原動力になっているのが、作家の心情や出版業界の内幕など、読書好きをくすぐるネタを絶えず入れこんでくるところだろう。これもただの楽屋落ちみたいなものだと困るのだが、基本的にはオブラートに包んだ笑いに昇華されており、ときにはブラック、ときには皮肉を効かせたりと、その匙加減がなかなかいい。しかも、ただの味つけに終わらせず、設定にうまく絡めていたり、ストーリー展開上でもいいアクセントになっていたりする。
また、デビュー間もないペーペー作家の奥さんが、いつのまにか自分より売れていたりといった、登場人物たちの近況が変化していくのも愉しい部分で、これは思った以上に楽しめる一冊だった。
流れで楽しめるところも大きいので、お好みをあげるのも野暮な感じはするが、あえて選ぶなら「シャンクス、強盗にあう」、「シャンクス、殺される」あたりか。前者は予想外の着地がお見事で、後者は全編、毒に満ちあふれていて笑える。

Shanks at Lunch「シャンクス、昼食につきあう」
Shanks at the Bar「シャンクスはバーにいる」
Shanks Goes Hollywood「シャンクス、ハリウッドに行く」
Shanks Gets Mugged「シャンクス、強盗にあう」
Shanks on the Prowlシャンクス、物色してまわる」
Shanks Gets Killed「シャンクス、殺される」
Shanks on Misdirection「シャンクスの手口」
Shanks' Ghost Story「シャンクスの怪談」
Shanks' Mare「シャンクスの牝馬(ひんば)」
Shanks for the Memory「シャンクスの記憶」
Shanks Commences「シャンクス、スピーチをする」
Shanks' Ride「シャンクス、タクシーに乗る」
Shanks Holds the Line「シャンクスは電話を切らない」
Shanks Goes Rogue「シャンクス、悪党になる」
レオポルド・ロングシャンクス、通称シャンクスは五十代のミステリ作家。同じく作家の奥様コーラと暮らし、日々の生活に困ることはないけれど、流行作家の道は高く険しい。そんなシャンクスの前にはなぜか事件や謎が多発する。シャンクスは愚痴をこぼしながらも、見事、名探偵よろしく事件を解決に導いていく——。
しいていえば雰囲気としてはアシモフの「黒後家蜘蛛の会」に近いか。ただ、あそこまでパズルに特化しているわけではなく、ミステリとしてのキレ味、サプライズといった部分はそれほどではない。読みどころはやはりキャラクターのやりとりやユーモアの部分で、まあ、これは読む前から予想していたとおりのイメージだ。
そんなわけで基本的に暇つぶし程度の一冊かと思っていたのだが、これが一作、二作と読み進めるうちに、だんだんと面白さが加速し、引き込まれていったから不思議なものだ。
その原動力になっているのが、作家の心情や出版業界の内幕など、読書好きをくすぐるネタを絶えず入れこんでくるところだろう。これもただの楽屋落ちみたいなものだと困るのだが、基本的にはオブラートに包んだ笑いに昇華されており、ときにはブラック、ときには皮肉を効かせたりと、その匙加減がなかなかいい。しかも、ただの味つけに終わらせず、設定にうまく絡めていたり、ストーリー展開上でもいいアクセントになっていたりする。
また、デビュー間もないペーペー作家の奥さんが、いつのまにか自分より売れていたりといった、登場人物たちの近況が変化していくのも愉しい部分で、これは思った以上に楽しめる一冊だった。
流れで楽しめるところも大きいので、お好みをあげるのも野暮な感じはするが、あえて選ぶなら「シャンクス、強盗にあう」、「シャンクス、殺される」あたりか。前者は予想外の着地がお見事で、後者は全編、毒に満ちあふれていて笑える。
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Comments
Edit
これは「暗くないミステリ短編集」で、良かったです。
私は北欧ミステリも読むんですが、最近は「世の中」のせいで、明るい?方が気が楽になってきました。
ポケミスのミステリも読んでいますが、疲れることがおおいです。
そんな中、明るい系?は貴重だと思っています。
Posted at 16:48 on 07 27, 2020 by fontanka
fontankaさん
そうですね。私は基本的には暗いのやシリアスなのが好みではあるのですが、最近はリアルニュースが暗いのと、こっちが歳を取ったせいもあって、だんだん疲れる読書が多くなってきました(苦笑)。やはり明るいミステリを適度に挟んで読むことは精神衛生上、必要ですね。
Posted at 18:44 on 07 27, 2020 by sugata