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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


M・D・ポースト『馬匹九百頭』(湘南探偵倶楽部)

 M・D・ポーストの短編『馬匹九百頭』を読む。湘南探偵倶楽部さんの復刻版だが、本書は「知られざる中短編」という縛りで紹介してくれているもの。このシリーズは意外な拾い物が多くて、いつも楽しみにしているのだが、本書もなかなか小粋な作品であった。

 馬匹九百頭

 ハーグレーヴ青年はロンドンに駐在するニューヨークの宝石商の出張員。ある日、彼が社交場「エンパイア倶楽部」に顔を出すと、顔見知りの刑事部長ヘンリー・マークヰスがある暗号に頭を悩ませていた。それは新聞に掲載された「馬匹九百頭を汽船で積み出した」という広告だったが、そこに犯罪があるとヘンリーは睨んでいた。
 結局、知り合いの博士に解読を依頼するといって、その場を後にしたヘンリー。残されたハーグレーヴが寛いでいると、そこへ高貴な婦人が現れて宝石の鑑定を依頼する……。

 興味の中心は当然ながら暗号にあるのだが、早々に物語はハーグレーヴの宝石鑑定に移っていく。婦人がさる軍人らしき男から宝石を入手したいのだが、取引に残された時間は少ない。そこでハーグレーヴに鑑定と仲介も頼んでくるという展開である。
 読者としてはこの取引に胡散臭いものを感じるものの、宝石はハーグレーヴ自身が確認して紛れもない本物である。ではどこに落とし穴が待っているのか? そもそも暗号の件はどうなったのか?
 本格ミステリというよりはオチで読ませるタイプだが、ストーリーの展開やラストの演出がうまくて思わずニンマリ。ポーストのノンシリーズの短編はいくつか翻訳されているが、このレベルのものが多いのなら、どこかの出版社がまとめてもよいのではないかな。

 ちなみに管理人は本書で初めて知ったのだが、『馬匹九百頭』の「馬匹」は「ばひつ」と読み、意味としては「家畜用の馬」を主に指すらしい。もともと「匹」というのは馬の数え方であり、それが他の動物を数えるときにも転用されたということだ。ではなぜ「匹」が馬から出てきたのか、なぜ今では馬を「頭」と数えるのか、「匹」と「頭」の違いとは? このあたり、ネットで調べるとかなり面白かったので、もし興味ある方は「匹とは」あたりで検索するとよろしいかと。
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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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