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ドン・ウィンズロウ『ウォータースライドをのぼれ』(創元推理文庫)
本日の読了本はドン・ウィンズロウの『ウォータースライドをのぼれ』。ニール・ケアリー・シリーズの第四作だが、実質的にはシリーズの最終作ということらしい。では既に刊行されている第五作『砂漠で溺れるわけにはいかない』は何なんだ?ということになるが、あれは後日談みたいなものなんだとか。なんや、それ。
それはともかく『ウォータースライドをのぼれ』。
恋人カレンと同棲中のニールのもとへ養父グレアムがやってきた。全米で絶大なる人気を誇るテレビ番組のホストがレイプ事件を起こしたが、その被害者女性が裁判でちゃんと証言できるように、きちんとした英語を話せるようにしてやってくれというのだ。粗野でとてつもない訛りのある彼女に対し、ニールの特訓が始まるが、誰も知らないはずのニールの家に早くも敵の魔手が迫る……。
ううむ、面白いことは面白いが、ニール・ケアリー・シリーズってこんなコミカルな物語だったかな。
確かに本シリーズは、もともと語り口は軽やかだしユーモアにもあふれている。だがその内容やテーマはずしんと重い、というのが基本的な特徴だ。なにせ主人公のニールはもとストリート・キッズという過去を持ち、その過去故に形成された刹那的かつ空虚な人生観を持つ。それが新たに得た探偵という仕事、養父でもあるグレアムとの関係、そして事件での悲惨な体験などを通して、少しずつ変化し成長してゆくところが魅力なのである。作者のウィンズロウもそんなニールの成長を助けるため?これまでいささか過剰と思えるほどの試練をニールに課してきたはず。
ところが本作は実質的な最終作という割に、ニールたちに関わるテーマはほとんどなく、事件のコミカルな面ばかりが強調される。ニールもいつもほど悩むこともなく、どちらかというと狂言回し的な役回りだ。
で、最初は作風の変化かとも思ったのだが、結局これは作者がニール・ケアリー・シリーズで語りたいことを語り終えたということなのだろう。要はニールも大人になりました、ということ。実際の話、本作でのニールは、プロフェッショナルとしての余裕すら感じられ、かなりのピンチにも動じることなく対処する。それはそれで面白いが、これまでのシリーズとはだいぶ異なる路線の作品ばかりになっていくことだろう。おそらく作者のウィンズロウはそれを潔しとしない人なのだ。
だから残念ではあるけれども、とりあえずは拍手をもってニール・ケアリー・シリーズの完結を迎えたいと思う。あ、でも「後日談」も一応読まなきゃ。
それはともかく『ウォータースライドをのぼれ』。
恋人カレンと同棲中のニールのもとへ養父グレアムがやってきた。全米で絶大なる人気を誇るテレビ番組のホストがレイプ事件を起こしたが、その被害者女性が裁判でちゃんと証言できるように、きちんとした英語を話せるようにしてやってくれというのだ。粗野でとてつもない訛りのある彼女に対し、ニールの特訓が始まるが、誰も知らないはずのニールの家に早くも敵の魔手が迫る……。
ううむ、面白いことは面白いが、ニール・ケアリー・シリーズってこんなコミカルな物語だったかな。
確かに本シリーズは、もともと語り口は軽やかだしユーモアにもあふれている。だがその内容やテーマはずしんと重い、というのが基本的な特徴だ。なにせ主人公のニールはもとストリート・キッズという過去を持ち、その過去故に形成された刹那的かつ空虚な人生観を持つ。それが新たに得た探偵という仕事、養父でもあるグレアムとの関係、そして事件での悲惨な体験などを通して、少しずつ変化し成長してゆくところが魅力なのである。作者のウィンズロウもそんなニールの成長を助けるため?これまでいささか過剰と思えるほどの試練をニールに課してきたはず。
ところが本作は実質的な最終作という割に、ニールたちに関わるテーマはほとんどなく、事件のコミカルな面ばかりが強調される。ニールもいつもほど悩むこともなく、どちらかというと狂言回し的な役回りだ。
で、最初は作風の変化かとも思ったのだが、結局これは作者がニール・ケアリー・シリーズで語りたいことを語り終えたということなのだろう。要はニールも大人になりました、ということ。実際の話、本作でのニールは、プロフェッショナルとしての余裕すら感じられ、かなりのピンチにも動じることなく対処する。それはそれで面白いが、これまでのシリーズとはだいぶ異なる路線の作品ばかりになっていくことだろう。おそらく作者のウィンズロウはそれを潔しとしない人なのだ。
だから残念ではあるけれども、とりあえずは拍手をもってニール・ケアリー・シリーズの完結を迎えたいと思う。あ、でも「後日談」も一応読まなきゃ。
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