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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

楠田匡介『少年少女探偵冒険小説選 III』(湘南探偵倶楽部)

 湘南探偵倶楽部さんが復刻しているミステリもいろいろある中で、内容はそれほど大したことがないのに(笑)ついついクセになってしまうのが楠田匡介のジュヴナイル。中編クラスの作品が小冊子という感じで二つほど復刻されたと思ったら、ついには『少年少女探偵冒険小説選』というジュヴナイル短編集に発展してしまう。しかもこれが好評なようで、二ヶ月ほど前にはとうとう第三集まで出てしまった。
 本日の読了本は、その楠田匡介のジュヴナイル第三集にあたる『少年少女探偵冒険小説選 III』である。

 少年少女探偵冒険小説選III

「姫鏡台の謎」

良夫君の事件簿 III
「第一話 旅客機内の怪事件」
「第二話 霜の夜」
「第三話 薄い水」
「第四話 目撃者」
 
犯人当て推理掌編集
「恐ろしきジャンプ台」
「ひなまつりの夜」
「消えた仏像」
「源太島の殺人事件」
「花まつりの午後」

推理小説集
「第一話 屍体の顔」
「第二話 一千万円の未亡人」

 収録作は以上。「姫鏡台の謎」以外の作品には「良夫君の事件簿 III」といった感じで章題がつけられているが、基本的なテイストに大きな違いはなく、おそらく発表媒体でまとめたものだろう。どれも昭和三十年から四十年ごろの「中学一年コース」とか「高一時代」等、当時の学年誌に連載されたもので、これも当時の流行かと思うが推理クイズ形式にしているものが多い。
 質的にもこれまでの作品集と大きな違いはない。ただ、表題作扱いの「姫鏡台の謎」もごく短い作品で、それが少し物足りない。もちろん、そこまでミステリとして純粋に期待するようなシリーズではないのだけれど、一応これまで復刻された作品でも中編レベルはそれなりのインパクトもあったので、そこがちょっと残念といえば残念なところか。
 楠田ジュヴナイルではおなじみの名探偵・小松良夫君は相変わらず大活躍で、姉の良子、父親の良三博士、田名見警部、大坂弁護士といったレギュラー・準レギュラーも入れ替わりで顔を出すなど、連載ものはこういう登場人物の活躍も楽しみのひとつといえるだろう。

 なお、目次に記載されている「和製ルパン」と「世にも不思議な物語」は本編には収録されておらず、これは編者のミスによるものか。
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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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