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都筑道夫『悪意銀行』(ちくま文庫)
笑いの価値観というやつは本当に難しくて、たとえばM1グランプリなどの感想をTwitterなどで見ていると、人によって本当にツボがバラバラである。年齢や性別、出身地、育ってきた環境など、さまざまな要素が入り混じっての結果だろうが、日本国内でもこれだから、海外の映画や小説でのギャグが理解できないケースはかなり多い。いや、理解はできているだろう。ただ、文化が異なるので笑いのツボも異なるのである。
かくいう管理人も日本の漫才や英国のブラックユーモアなんかは割と好きだが、アメリカ流のスラップスティック・コメディはそれほど得意ではない。
だから都筑道夫がスラップスティック・コメディにチャレンジした『紙の罠』は長らく読んでいなかったのだが、これがちくま文庫から出たときに、近藤&土方シリーズをまとめたものになるというので、とうとう読むことにしたわけである。
結果、思ったよりは全然楽しく読むことができ、さすが都筑道夫という感じでひと安心だったが、本日の読了本はその『紙の罠』に続くシリーズの第二弾『悪意銀行』。この二冊で一応、近藤&土方シリーズがすべて読めるという形になっている。

こんな話。犯罪の芸術性を高めようと〈悪意銀行〉なるものを設立した土方利夫。その土方に、愛知県の地方都市の市長を暗殺してほしいという依頼が舞い込んだ。それを聞きつけた近藤庸三、土方ばかりに美味い汁を吸わせるつもりはないとばかりに、さっそく現地へ乗り込んでゆくが……。
『紙の罠』は笑いを前面に押し出していたとはいえ、ミステリや犯罪小説としての結構はキープしていたのに対し、本作は作者自らあとがきで述べているとおり、目的は読者を笑わせることにあるという。しかもアメリカ流スラップスティック・コメディに日本伝統の笑い〈落語〉のテイストをミックスした〈ラクゴティック・スリラー〉だというから、なんだか、この著者の言葉自体がすでにギャグのようだ。
ただ、実際に読んでみると、ギャグだけでなくストーリーの面白さについても『紙の罠』よりは本作の方が満足度は高かった。『紙の罠』がミステリとしてもそれなりに盛り込んでいたせいか、登場人物やストーリーがゴチャゴチャした印象を受けたのに対し、本作は笑いが中心ということもあって全体がスッキリとしており、安心して笑いの方に流されるのがよい。近藤と土方の関係性も前作より安定しており、よりツーカーな感じで、これもまたよし。
なお、併録している中編の「ギャング予備校」も悪くない作品で、近藤&土方シリーズ作品が揃うという意味でも『紙の罠』と合わせてファンは必携であろう。ただし、笑いのツボが合わない人はその限りにあらずということで。
かくいう管理人も日本の漫才や英国のブラックユーモアなんかは割と好きだが、アメリカ流のスラップスティック・コメディはそれほど得意ではない。
だから都筑道夫がスラップスティック・コメディにチャレンジした『紙の罠』は長らく読んでいなかったのだが、これがちくま文庫から出たときに、近藤&土方シリーズをまとめたものになるというので、とうとう読むことにしたわけである。
結果、思ったよりは全然楽しく読むことができ、さすが都筑道夫という感じでひと安心だったが、本日の読了本はその『紙の罠』に続くシリーズの第二弾『悪意銀行』。この二冊で一応、近藤&土方シリーズがすべて読めるという形になっている。

こんな話。犯罪の芸術性を高めようと〈悪意銀行〉なるものを設立した土方利夫。その土方に、愛知県の地方都市の市長を暗殺してほしいという依頼が舞い込んだ。それを聞きつけた近藤庸三、土方ばかりに美味い汁を吸わせるつもりはないとばかりに、さっそく現地へ乗り込んでゆくが……。
『紙の罠』は笑いを前面に押し出していたとはいえ、ミステリや犯罪小説としての結構はキープしていたのに対し、本作は作者自らあとがきで述べているとおり、目的は読者を笑わせることにあるという。しかもアメリカ流スラップスティック・コメディに日本伝統の笑い〈落語〉のテイストをミックスした〈ラクゴティック・スリラー〉だというから、なんだか、この著者の言葉自体がすでにギャグのようだ。
ただ、実際に読んでみると、ギャグだけでなくストーリーの面白さについても『紙の罠』よりは本作の方が満足度は高かった。『紙の罠』がミステリとしてもそれなりに盛り込んでいたせいか、登場人物やストーリーがゴチャゴチャした印象を受けたのに対し、本作は笑いが中心ということもあって全体がスッキリとしており、安心して笑いの方に流されるのがよい。近藤と土方の関係性も前作より安定しており、よりツーカーな感じで、これもまたよし。
なお、併録している中編の「ギャング予備校」も悪くない作品で、近藤&土方シリーズ作品が揃うという意味でも『紙の罠』と合わせてファンは必携であろう。ただし、笑いのツボが合わない人はその限りにあらずということで。
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