- Date: Tue 03 11 2020
- Category: 国内作家 泡坂妻夫
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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泡坂妻夫『生者と死者 酩探偵ヨギ ガンジーの透視術』(新潮文庫)
泡坂妻夫の『生者と死者 酩探偵ヨギ ガンジーの透視術』を読む。ヨーガと奇術の達人ヨギ ガンジーのシリーズ三作目、というよりは「消える短編小説」を実現した異色の作品といった方が通りはいいだろう。
まあ、皆さまご存知とは思うが念のため仕掛けを説明しておくと、本書は袋とじのまま出版された本である。十六ページごとに袋とじになっており、そのまま読むと「消える短編小説」。しかし、読み終えた後に袋とじをすべて切り開くと、長編小説『生者と死者』となるのである。
まあ、当たり前のことだが、先に袋とじを開くと短編は読めなくなるのでご注意を。事前に付箋でもつけておけば大丈夫だが、それも忘れたという人は、16-17ページ→32-33ページ……というように十六ページごとの見開きで読めば、一応読むことはできる。管理人はそういうのが面倒だったので、読み終えた後に短編用としてもう一冊買ってしまったけれど。

ガンジー一行は、ある弁当会社の社長から相談を受ける。社長によると、記憶喪失ながら超能力を持った女性がおり、その女性を雇ってほしいという依頼を受けたという。しかし、話そのものが胡散臭いので、ガンジーたちに超能力実験の立ち会いをしてほしいのだという…‥。
以上は長編の方の導入だ。これまでのガンジーもの同様、ベースにあるのは超能力の真偽であり、そこに犯罪が絡んでくる。一方、短編はガンジーこそ登場しないものの、やはり超能力がネタになっている。
誰もが読む前に想像するのは、長編は短編をボリュームアップさせたものだろうということだが、奇術師でもある著者がそんなことで満足するはずがない。驚くべきことにストーリーは全然別物であり、登場人物も同一ではなく(短編での名字が長編では名前になったり、性別も変えたり等々)、アナグラムですら別の解釈で見せる。いや、実にお見事。
ただ、さすがにこの仕掛けのハードルは泡坂妻夫をもってしても少々高すぎたか、作品自体にいつもの面白さはない。超能力絡みのトリックもさすがにネタ切れっぽいし、長編についてはメイントリックもいまひとつ。また、短編はさらに完成度が低く、やはり短編と長編を両立させるだけで目一杯というところか。
チャレンジ精神には文句なく拍手を送りたいれど、仕掛けはともかく全体としては『しあわせの書 迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術』の出来には一歩及ばず、といったところか。
まあ、皆さまご存知とは思うが念のため仕掛けを説明しておくと、本書は袋とじのまま出版された本である。十六ページごとに袋とじになっており、そのまま読むと「消える短編小説」。しかし、読み終えた後に袋とじをすべて切り開くと、長編小説『生者と死者』となるのである。
まあ、当たり前のことだが、先に袋とじを開くと短編は読めなくなるのでご注意を。事前に付箋でもつけておけば大丈夫だが、それも忘れたという人は、16-17ページ→32-33ページ……というように十六ページごとの見開きで読めば、一応読むことはできる。管理人はそういうのが面倒だったので、読み終えた後に短編用としてもう一冊買ってしまったけれど。

ガンジー一行は、ある弁当会社の社長から相談を受ける。社長によると、記憶喪失ながら超能力を持った女性がおり、その女性を雇ってほしいという依頼を受けたという。しかし、話そのものが胡散臭いので、ガンジーたちに超能力実験の立ち会いをしてほしいのだという…‥。
以上は長編の方の導入だ。これまでのガンジーもの同様、ベースにあるのは超能力の真偽であり、そこに犯罪が絡んでくる。一方、短編はガンジーこそ登場しないものの、やはり超能力がネタになっている。
誰もが読む前に想像するのは、長編は短編をボリュームアップさせたものだろうということだが、奇術師でもある著者がそんなことで満足するはずがない。驚くべきことにストーリーは全然別物であり、登場人物も同一ではなく(短編での名字が長編では名前になったり、性別も変えたり等々)、アナグラムですら別の解釈で見せる。いや、実にお見事。
ただ、さすがにこの仕掛けのハードルは泡坂妻夫をもってしても少々高すぎたか、作品自体にいつもの面白さはない。超能力絡みのトリックもさすがにネタ切れっぽいし、長編についてはメイントリックもいまひとつ。また、短編はさらに完成度が低く、やはり短編と長編を両立させるだけで目一杯というところか。
チャレンジ精神には文句なく拍手を送りたいれど、仕掛けはともかく全体としては『しあわせの書 迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術』の出来には一歩及ばず、といったところか。
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まあ、「野心作」でいいんじゃないでしょうか(笑)。ただ、多少イチャモンはつけましたが、実験的な小説は大抵、中身よりその技法のみを追求している場合がほとんどなので、ミステリとして完結させようとした泡坂先生は十分にすごいと思いますよ。
若い頃はそういうのに惹かれていろいろ読みましたが、純文学系は何でもありというか、酷いものが多いです(笑)。