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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ベストテンの季節がやってきた

文春&ミスマガ2020ベストテン

 今年も残り一ヶ月を切ってしまって、ミステリ界隈では年末ベストテンの季節到来である。すでに『ミステリマガジン』の「ミステリが読みたい!」と『週刊文春』の「ミステリーベスト10」が発表され、なんと両ランキングの海外部門でアンソニー・ホロヴィッツの『その裁きは死』が1位を獲得してしまった。しかもホロヴィッツは三連覇達成である。
 この調子では、もうすぐ出るはずの(もう出てるかな)『このミステリーがすごい!』もおそらくトップは堅そうな気配で、なんだかなぁという感じである。

 いや、いいんですよ。面白い作品であれば福岡ソフトバンクホークスみたいに四連覇しちゃっても。実際、ホロヴィッツの作品だってつまらないわけじゃなく、作品としてちゃんと面白い。ただ、正直、前の二作よりは明らかに落ちるし、当然、評価は少し下がっていいはずだ。ところが蓋を開ければ堂々のV3。ランキングは相対的なものだから、他の作品がそれ以下の出来であれば仕方ないけれど、対抗馬だっていろいろ出ているからね。

 このあたりについては、当ブログでも毎年のように書いているのだが、結局、各ミステリベストテンの選考方法がアバウトすぎて、そこがどうも素直に楽しめない原因になっている。
 気になるところはいくつかあるのだが、やはり一番問題なのは、投票者がその年の新作ミステリをどれだけ読んで投票したかということだろう。全部読んで、そのうえでランキング投票していればいもちろん問題はない。しかし、本当に素晴らしい作品なのに、知名度がなかったり、刊行が投票〆切日に近いため読むのが間に合わなかったりで、いい作品を未読のまま投票している可能性がずいぶん高いのではないか。
 ミステリ評論家や書評家なら、かなりの範囲、かなりの冊数を消化していると信じたいが、それだって怪しい。ましてや業界関係者以外が自分の好みとは異なるジャンルを含め、新刊ばかり何十冊も読んでいるとはとても思えない。
 だから結局はメジャーな作家、宣伝しまくった作品、インターネットで評判になった作品ばかりが読まれることになり、自ずと票も集めてしまう。

 思えばこういう状況は、かつての『週刊文春』の「ミステリーベスト10」で顕著だった(まあ、文春は今でもだけど)。当時は今みたいにインターネットが普及していなかったから、サイトやSNSで情報を集めることが難しかった。ハズレを掴むリスクはを避けたいので、おのずとメジャーな作家の作品、出版社が宣伝に力を入れた作品ばかりに注目してしまい、そのなかからランキングが生まれてきたといっても過言ではない。
 まあ今となっては、『週刊文春』の「ミステリーベスト10」の権威主義的なところはお家芸のようにもなっており、むしろメジャーが有利なベスト10ということで特化している感すらあるので、それはそれでいいかもしれない(苦笑)。そういう観点で割り切ってランキングを眺めればよいわけである。
 ただ、文春のアンチテーゼとして誕生した宝島社の『このミステリーがすごい!』と最後発の『ミステリマガジン』の「ミステリが読みたい!」まで、同じような状況になっては駄目でしょう。
 この両誌は投票者の個人ランキングも晒しているから、まだ良心的ではあるが、惜しむらくは何と比べたうえでのランキングか知りたいわけである。
 極端なことをいうと、10冊しか読んでない人が投票したら、どんな駄作でもランキング入りする羽目になってしまうではないか。

 とはいえ、その年の新刊すべてを読んだ人しか投票してはいけない、なんてことは現実的に無理なのもわかる。
 ではどうすべきか。一番、無理がないのは、投票者に公平に判断してもらうため、30作ぐらいをノミネートして、そのノミネート作品を最終審査員が全作読んだうえで投票する形である。
 ノミネートする作品はそれこそ人海戦術で多くの読み手に参加してもらい、第一次審査的な形にする。もちろん漏れが出てはいけないから、一作につき最低二〜三人は読むようにしたい。一次審査する数が多いので、かなりコストがかかる欠点はあるけれど。
 また、最終審査については、投票だけでなく、完全合議制にするのも面白い。早い話が、文学賞の選考スタイルである。こちらであれば、最終審査員の人数はかなり絞ることも可能だろう。というか、絞らないと収拾がつかなくなる危険大だろう。

 あと、別の話にはなるが、どうせやるならベストテンをやっている出版社が共同で開催するのはどうか(共同開催が大変なら、持ち回り制という手もある)。
 そもそもランキングの数が多すぎる。本ミスも入れると4種類だし、ほかにもネットでファンが開催しているものなどもあるわけで、これではボクシングやプロレス並にタイトルが多いではないか。そこで一本に絞るわけである。
 あ、別に絞らなくても、各ランキングの一位の本を担当した編集者が集まって、最後にビブリオバトル形式でチャンピオンを決める手もあるな(笑)。

 まあ、グダグダと書いてみたが、せっかくのお祭りなので、もう少しスッキリ楽しめるほうがいいし、もっと盛り上げる工夫はあったほうがいいよなぁ、というお話。


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Comments

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ポール・ブリッツさん

それだったら毎月の新刊でビブリオバトルですね。その月のチャンピオンが年末に集まって決勝戦。これでランキング決定です。レベルの高いの月もあるでしょうから、それをサルベージするためにワイルドカード枠も作るってのはどうですか。

Posted at 09:54 on 12 05, 2020  by sugata

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ハヤシさん

ベストテンをやっているところは、基本的に本を売るためにやっていると思うので(ランク入りした本ではなく、週刊文春とかこのミス自体の本です)、そこまで不都合を感じていないんでしょうね。それこそ出版文化を盛り上げようと思うなら、諸々の課題について、もう少し改善しようと思うはずですが、最近は惰性でやっている感じですからね、どこも。本当なら早川書房あたりが提唱してほしいところですが。

Posted at 09:54 on 12 05, 2020  by sugata

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昔、夢枕獏先生が、年末のベストをチャンピオンベルト制にしろ、と何かで書かれてましたなあ……(^^;)

Posted at 04:34 on 12 05, 2020  by ポール・ブリッツ

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その昔、文春の一位が判で押したように乱歩賞作品だった頃に比べれば、まだマシかもしれませんが、多様性が失われているということは確実にジャンルとしてのミステリだけでなく、出版文化自体が衰退している証と思い、愕然とします。既存の賞のアンチテーゼの筈だった本屋大賞のていたらくもその象徴かも。ホロヴィッツ面白かったですが、三冠はいくらなんでも…。

Posted at 02:34 on 12 05, 2020  by ハヤシ

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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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