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J・S・フレッチャー『ミドル・テンプルの殺人』(論創海外ミステリ)
久々に所沢の古本市「彩の国所沢古本まつり」へ出かけてみた。もともと規模が大きいのでコロナ以前から全然密な状態ではないのだが、入り口で漏れなく消毒と検温がちゃんとされているし、通路も広いので安心感は高い。なんせ来場者の平均年齢が高いから(運営者も)、これぐらいは当たり前なのかもしれない。
ちなみに釣果はそれほどのことはなくて『ディケンズ短篇集』、南洋一郎『魔海の宝』、フランク・グルーバー『グルーバー 殺しの名曲5連弾』、『エラリー・クイーン傑作集』、海渡英佑『積木の壁』など。
本日の読了本はJ・S・フレッチャーの『ミドル・テンプルの殺人』。論創海外ミステリの一冊である。
フレッチャーはミステリ黄金時代の初期に大いに活躍したが、如何せん流行作家の宿命か、今ではほぼ忘れられた作家の一人である。管理人も以前に『亡者の金』を読んだことはあるが、やはり厳しいかなという感じであった。
しかし、『ミドル・テンプルの殺人』は代表作の一つとして数えられるだけあり、そこそこ楽しく読むことができた。

ウォッチマン新聞社で副編集長を務めるフランク・スパルゴ。今日も担当するコラムを仕上げ、早朝近くに会社を退社したところ、ある男の殺害事件に遭遇する。身元不明だった被害者だが、ポケットからはある弁護士の名前が記された紙切れが発見された。それはスパルゴも知っている弁護士だったが、いざ会って話を聞くと、その弁護士は被害者のことは知らないという。徐々に興味が増してきたたスパルゴは、担当のラスベリ-部長刑事と協力して捜査を進めるが……。
やはり謎解き興味は薄いけれど、『亡者の金』よりはだいぶ面白い。もちろん全般的な傾向は『亡者の金』とそれほど変わらないし、古臭いところは当然あるのだが(1919年の作だからなんとクリスティのデビュー前!)、ストーリーがかなり強くて、いくつかの弱点を全部うっちゃってるイメージ。
序盤は五里霧中からスタートするが、新しい情報や手がかりがテンポよく出てきて、見事に物語を引っ張ってゆく。展開が早くなりすぎていて、普通の本格ミステリならやりすぎかなと思うのだが、このさじ加減が絶妙でというか、著者の撒き餌にうまく乗せられていく感じが心地よい。
謎を追う探偵役のスパルゴも、こういうスピーディーな展開にちょうどいいキャラクターだ。推理や試行錯誤にはあまり時間をかけず、むしろ足で捜査を進めるタイプ。ただ、そうはいっても決してクロフツとかと同類ではなく、むしろアメリカの古いサスペンス映画とかに登場しそうなはじけた若手記者といった感じである。
決して心に残るような作品とは違うが、読んでいる間は十分に楽しめる、娯楽に徹した一作である。
ちなみに釣果はそれほどのことはなくて『ディケンズ短篇集』、南洋一郎『魔海の宝』、フランク・グルーバー『グルーバー 殺しの名曲5連弾』、『エラリー・クイーン傑作集』、海渡英佑『積木の壁』など。
本日の読了本はJ・S・フレッチャーの『ミドル・テンプルの殺人』。論創海外ミステリの一冊である。
フレッチャーはミステリ黄金時代の初期に大いに活躍したが、如何せん流行作家の宿命か、今ではほぼ忘れられた作家の一人である。管理人も以前に『亡者の金』を読んだことはあるが、やはり厳しいかなという感じであった。
しかし、『ミドル・テンプルの殺人』は代表作の一つとして数えられるだけあり、そこそこ楽しく読むことができた。

ウォッチマン新聞社で副編集長を務めるフランク・スパルゴ。今日も担当するコラムを仕上げ、早朝近くに会社を退社したところ、ある男の殺害事件に遭遇する。身元不明だった被害者だが、ポケットからはある弁護士の名前が記された紙切れが発見された。それはスパルゴも知っている弁護士だったが、いざ会って話を聞くと、その弁護士は被害者のことは知らないという。徐々に興味が増してきたたスパルゴは、担当のラスベリ-部長刑事と協力して捜査を進めるが……。
やはり謎解き興味は薄いけれど、『亡者の金』よりはだいぶ面白い。もちろん全般的な傾向は『亡者の金』とそれほど変わらないし、古臭いところは当然あるのだが(1919年の作だからなんとクリスティのデビュー前!)、ストーリーがかなり強くて、いくつかの弱点を全部うっちゃってるイメージ。
序盤は五里霧中からスタートするが、新しい情報や手がかりがテンポよく出てきて、見事に物語を引っ張ってゆく。展開が早くなりすぎていて、普通の本格ミステリならやりすぎかなと思うのだが、このさじ加減が絶妙でというか、著者の撒き餌にうまく乗せられていく感じが心地よい。
謎を追う探偵役のスパルゴも、こういうスピーディーな展開にちょうどいいキャラクターだ。推理や試行錯誤にはあまり時間をかけず、むしろ足で捜査を進めるタイプ。ただ、そうはいっても決してクロフツとかと同類ではなく、むしろアメリカの古いサスペンス映画とかに登場しそうなはじけた若手記者といった感じである。
決して心に残るような作品とは違うが、読んでいる間は十分に楽しめる、娯楽に徹した一作である。
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