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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

L・J・ビーストン『ビーストン傑作集』(創土社)

 『ビーストン傑作集』を読む。著者のL・J・ビーストンは1920〜30年代の英国で多くの作品を発表した短編作家。日本でも戦前に人気を集め、雑誌『新青年』ではもっとも多く作品が掲載された海外作家だ。
 まずは収録作。

「マイナスの夜光珠」
「悪漢ヴオルシヤム」
「過去の影」
「人間豹」
「五千ポンドの告白」
「約束の刻限」
「頓馬な悪漢」
「パイプ」
「緑色の部屋」
「決闘家クラブ」
「廃屋の一夜」
「クレッシングトン夫人の青玉」
「地球はガラス」
「マーレイ卿の客」
「地獄の深淵」
「幽霊階段」
「霧雨の夜の唄」
「犯罪の氷の道」

 ビーストン傑作集

 ビーストンの短編をまとめて読むのは初めてである。もちろん単品ではいくつか読んだことがあるので、その面白さは知ってはいたけれど、まとめて読むと作風がより明確に理解できた。
 といっても管理人が今さら付け加えるようなことはない。犯罪をベースにした物語、ハラハラドキドキの展開、爽快などんでん返し。この三つがほぼすべてだろう。あえて加えるなら、基本的に勧善懲悪なので非常に読後感もよいということぐらいか。まるで炭酸ジュースを飲んでいるかのような、適度な刺激と口当たりの良さがビーストンの魅力だろう。なるほど、人気があったのもむべなるかな。

 ただ、単品で読んでいるときにはあまり気にならなかったが、こうやってまとめて読むと、同時に弱点も浮かび上がる。同じような作品ばかりで、実に飽きやすいのである(笑)。
 「同じような作品」といっても二つのポイントがあって、一つはどの作品でも必ずといっていいほど、どんでん返しがあること。その結果、慣れてくるとすぐにオチが読めてしまう。論理的に導かれるような驚きではなく、単純にストーリーの流れから予想されるのが弱いところだ。
 二つ目としては、設定やストーリーも似たような話が多いということ。そういう要望ばかり雑誌の編集から出たせいなのか、それとも単に作者自身のネタの引き出しが少なかったのか、理由は判然としないけれども。
 とはいえ、とにかく読者を驚かせたいのだという気持ちは十分に伝わってくるし、作品は実際面白いものばかりである。今読んでも決して退屈はしないだろう。

 ちなみに、一昔前はこの創土社版の古書ぐらいしかでしか読めなかったビーストンだけれど(しかもそこそこ高価)、今なら論創海外ミステリでも出ているので、気になる人はまずそちらで試してみてはいかがだろう。
 何より一番いいのは本書が文庫化されることだろうが、同じ創土社のルヴェルが創元で文庫化されているので、創元さんはぜひご検討を。



Comments
 
fontakankaさん

あ、そういうことでしたか。
どうぞお気になさらず(笑)。
 ごめんなさい!!!
ビーストン最近出るけど→間違い

ビーストン最近出ているけど→正しい
です
ごめんなさい!!!!
 
fontankaさん

>ビーストン最近でるけど、

え!? ビーストンの新刊出るんですか?
それは朗報です!!
 
「霧雨の夜の唄」が好きなんですよ。ビーストン最近でるけど、
あんな切ない話はないような気がしています・・・・

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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