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 かつて菊池幽芳が翻訳し、大阪毎日新聞に連載した作品『秘中の秘』。江戸川乱歩が子供の頃。毎日、母親に読み聞かせてもらっていたという作品でもある。
 ところが驚くべきことに、『秘中の秘』は作者、原作ともに長らく不明だったのだという。その正体が明らかになったのが、なん2019年のこと。ウィリアム・ル・キューが1903年に刊行された『The Tickencote Treasure』である。
 そして驚くことがもうひとつあって、原作が明らかになって数ヶ月もしないうちに、「ヒラヤマ探偵文庫」を運営する平山雄一氏がその完訳版を出したことだ。本日の読了本は、その『完訳版 秘中の秘』である。

 完訳版・秘中の秘

 まずはストーリー。
 医師のポール・ピッカリングは代診医として勤めた診療所の契約を終え、友人の老船長ジョブ・シールに誘われ、憧れだった船旅へ出発することになった。古く小さい貨物船だが、客人として乗り込み、気楽な旅を続けていたポール。
 そんなある日、船は幽霊船かと見間違えんほどの奇妙な船「タツノオトシゴ号」と遭遇する。この船は一度海中に沈んだ後、何らかの浮力によって再び浮上したものだった。さっそく内部を探索するシール船長一行だが、驚いたことに船内には一人の老人が生き残っており、さらには金貨の詰まった箱が発見される。しかもさらに莫大な財宝の存在を示唆する文書が発見された。
 やがて帰国したポールと船長は、財宝の在処を探そうと試みるが、彼らの行く手には不穏な者たちの姿が……。

 菊池幽芳訳の『秘中の秘』は論創ミステリ叢書『菊池幽芳探偵小説選』に収録されており、今では手軽に読むことができる。管理人も五年ほど前に読んでいるので、本来なら両作の比較研究など書きたいところだが、悲しいかな内容をほとんど忘れているので、今回は純粋に内容を楽しんだ(ちなみに両作の違いは本書の解説で紹介されている)。

 で、あらためて菊池版を心の中でリセットして読み始めたわけだが、これがなかなか面白い。いや、こんな面白かったっけ?というぐらい普通に楽しめるのである。
 1903年の作品なので、それはいろいろと古臭いところもあるけれど、とにかくサービス精神満点。ザクっといえば幽霊船騒動を軸とする冒険小説風の前半、宝物争奪戦を描くサスペンス風の後半となるのだが、ここに暗号などミステリ的仕掛けを加え、さらには恋愛や友情のサイドストーリーにも抜かりはなく、まったく飽きさせない。
 とはいえ菊池版は正直ここまで面白かった記憶がないので、やはりこの手の道具立てやキャラクターは、西洋という舞台の方がしっくりくるのではないだろうか。

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌



















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