- Date: Fri 21 10 2005
- Category: 国内作家 飛鳥高
- Community: テーマ "推理小説・ミステリー" ジャンル "本・雑誌"
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飛鳥高『青いリボンの誘惑』(新芸術社)
人間ドック後の再検査の結果を聞きにいく。まあ、結果は良好でひと安心だったが、最近は病院へいくことが多すぎて、なんだか自分でもよくわからないときがある。来週の月曜などは二軒の病院をハシゴだから嫌になる。
読了本は飛鳥高の『青いリボンの誘惑』。著者が六十九歳にして久々に発表した長篇であり、今のところ最後の長篇でもある。
人生においてある程度成功を収めたものの、いま病院のベッドで横たわる老人がいる。彼は折り合いの悪かった息子、裕を呼び出し、過去に会ったある事件の関係者のその後を調べてほしいと言う……。
事件の依頼者が親、という点を除けば、まるで一昔前のハードボイルドのような設定で始まる物語。だが冗談抜きに、本作は甘口のハードボイルドの趣を備えた作品である。設定やテーマはもちろん主人公、裕の行動や意識にもそれがうかがえるほか、全体的に抑え気味の筆致も雰囲気を助けている。もともと社会派としても見られているうえ、派手な作風の人ではないから、このような設定の話にすると自然ハードボイルドっぽくなったのかも。このタッチ、決して悪くはない。
残念ながらミステリとして評価するとそれほどの驚きはない。また、若者の描き方が少々古くさいなど、いくつかの傷はあるのだが、過去の事件と現在への流れ、それによって変化する人間関係のもつれなどを丁寧に描いており、作品世界をしっかり構築しているところはさすが。叙情的なミステリが好きな人なら読んでおいて損はないだろう。
ちなみに版元の新芸術社は、今の出版芸術社。これってまだ現役本なのかな?
読了本は飛鳥高の『青いリボンの誘惑』。著者が六十九歳にして久々に発表した長篇であり、今のところ最後の長篇でもある。
人生においてある程度成功を収めたものの、いま病院のベッドで横たわる老人がいる。彼は折り合いの悪かった息子、裕を呼び出し、過去に会ったある事件の関係者のその後を調べてほしいと言う……。
事件の依頼者が親、という点を除けば、まるで一昔前のハードボイルドのような設定で始まる物語。だが冗談抜きに、本作は甘口のハードボイルドの趣を備えた作品である。設定やテーマはもちろん主人公、裕の行動や意識にもそれがうかがえるほか、全体的に抑え気味の筆致も雰囲気を助けている。もともと社会派としても見られているうえ、派手な作風の人ではないから、このような設定の話にすると自然ハードボイルドっぽくなったのかも。このタッチ、決して悪くはない。
残念ながらミステリとして評価するとそれほどの驚きはない。また、若者の描き方が少々古くさいなど、いくつかの傷はあるのだが、過去の事件と現在への流れ、それによって変化する人間関係のもつれなどを丁寧に描いており、作品世界をしっかり構築しているところはさすが。叙情的なミステリが好きな人なら読んでおいて損はないだろう。
ちなみに版元の新芸術社は、今の出版芸術社。これってまだ現役本なのかな?
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