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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

北川清、徳山加陽、帝国書院編集部『地図で読む松本清張』(帝国書院)

 これだけインターネットで情報が入手できる時代になると、大抵の新刊は事前に発売予定が掴めてしまう。それでもたまに見逃す新刊があったりして、後から何かの拍子に書店やネットで発見し、こんな本が出ていたのかとびっくりすることがある。とりわけ書店での出会いは楽しいものだけれど、本日の読了本『地図で読む松本清張』もそんな一冊。

 地図で読む松本清張

 簡単にいうと、清張作品をその作品の舞台となる地図とともに紹介したガイドブックである。
 松本清張の作品はトラベルミステリの元祖といってもよく、旅情溢れる作品が少なくない。そこに目をつけるとはさすが地図の版元、帝国書院。自社の地図や写真をふんだんに用いて、清張の代表的な作品にアプローチする。
 扱われている作品は『ゼロの焦点』『砂の器』『点と線』『火と汐』『時間の習俗』『或る「小倉日記」伝』『波の塔』『球形の荒野』『Dの複合』『眼の壁』『天城越え』の十一作。
 これに加えて、清張作品の舞台となった昭和三十年代の中学校地図帳(しかも事件の舞台には作品名も付く)、鉄道系のコラム、詳細な索引などもあり、この手のガイドブックとしては非常に充実した内容といえるだろう。

 版元の強みが最大限に活かされているのはもちろんだが、作りがとにかく丁寧なのがよい。
 例えば、ただ舞台の地図を掲載するのではなく、引き出しで地図上にもコメントを付けるなど仕事が細かい。こういうのは管理人も編集者時代によくやっていたが、裏を取ったり確認したりするのが大変面倒なのだ。それをほぼ全編にわたってこなすなど、これだけでも信頼できる感じである。
 その結果、作品理解の助けにもなるし、旅のガイドブックという使い方もできる一冊となり、個人的にはかなり好印象。ミステリのガイドブックにもいろいろあるが、またひとつ面白そうなタイプが出てきたなという感じだ。
 清張の第二弾、あるいは他の作家でもいいから、ぜひシリーズ化してほしいものだが、できればその際は紙をもう少し薄くするなどし、開きやすい本にしてくれればなおよしである。


Comments
 
ポール・ブリッツさん

一般的には、むしろ、そちらの需要の方が全然大きいと思いますよ。ただ、利用頻度が国内に比べて落ちそう。
 
個人的には「地図で読むゴルゴ13」が読みたい(笑)

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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