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岡田鯱彦『岡田鯱彦探偵小説選II』(論創ミステリ叢書)
『岡田鯱彦探偵小説選II』を読む。I巻の方は今年の年明け早々に読んでおり、これも悪くなかったのだが、中編の「赤い頸巻(マフラー)」以外はやや軽めのものが多く、著者の本領発揮とまではいかない感じであった。しかし本書の方はガチガチの本格揃いということなので、いやがうえにも期待は高まってしまう。

「幽溟荘の殺人」
「愛(エロス)の殺人」
「52番目の密室 情痴の殺人」
「夢魔」
「三味線殺人事件」
「雪の夜語り」
「空間に舞う」
「G大生の女給殺し事件」
「あざ笑う密室」
収録作は以上。「幽溟荘の殺人」が長篇で、その他は短編という構成だが、先にかいたように全編本格で固めてあるのが嬉しい。しかも岡田鯱彦の場合、短篇といってもけっこうボリュームのあるものが多いことに加え、比較的質が安定していることもあって、これは大変楽しい一冊であった。
目玉はやはり長編の「幽溟荘の殺人」と言えるだろう。過去のトラブルから復讐を企てる手紙を受け取った夫妻と、それを防ごうとす探偵の物語。設定がこじんまりとしているので、どうしても真相を読まれやすい弱点はあるが、手がかり索引や“読者への挑戦”を盛り込むなど著者の熱量の高さが好ましい。何よりプロットがしっかりしていて、良い本格ミステリを読んだという気にさせてくれる。
短篇では「愛(エロス)の殺人」がよい。ヒロインの女性にちょっかいを出した人間が次々に死んでしまうという流れが面白い。特に二回目の事件が、一回目の事件と同じシチュエーションで繰り返されるに及び、「あ、これはちゃんと読まないとダメなやつだ」と襟を正してくれる(笑)。最後に探偵役がそのシチュエーションに身を投じる展開もあってサスペンスも上々である。ただ、ヒロインがそこまでモテる理由がよくわからん(苦笑)。
『岡田鯱彦探偵小説選I』の感想でも書いたけれど、岡田鯱彦はしっかりドラマを作り上げ、できるだけ犯罪に巻き込まれた人々の心理を描いてくれるのがいい。もちろんミステリなので制限はあるが、逆にミステリとしていまひとつであっても物語として惹きつけるものがある。
ミステリ史上においても『薫大将と匂の宮』という記憶に残る作品を描いているわけだし、もう少し知名度が上がって、残る作品も復刻されると嬉しいのだが。けっこう好きな作家だけに残念なことだ。

「幽溟荘の殺人」
「愛(エロス)の殺人」
「52番目の密室 情痴の殺人」
「夢魔」
「三味線殺人事件」
「雪の夜語り」
「空間に舞う」
「G大生の女給殺し事件」
「あざ笑う密室」
収録作は以上。「幽溟荘の殺人」が長篇で、その他は短編という構成だが、先にかいたように全編本格で固めてあるのが嬉しい。しかも岡田鯱彦の場合、短篇といってもけっこうボリュームのあるものが多いことに加え、比較的質が安定していることもあって、これは大変楽しい一冊であった。
目玉はやはり長編の「幽溟荘の殺人」と言えるだろう。過去のトラブルから復讐を企てる手紙を受け取った夫妻と、それを防ごうとす探偵の物語。設定がこじんまりとしているので、どうしても真相を読まれやすい弱点はあるが、手がかり索引や“読者への挑戦”を盛り込むなど著者の熱量の高さが好ましい。何よりプロットがしっかりしていて、良い本格ミステリを読んだという気にさせてくれる。
短篇では「愛(エロス)の殺人」がよい。ヒロインの女性にちょっかいを出した人間が次々に死んでしまうという流れが面白い。特に二回目の事件が、一回目の事件と同じシチュエーションで繰り返されるに及び、「あ、これはちゃんと読まないとダメなやつだ」と襟を正してくれる(笑)。最後に探偵役がそのシチュエーションに身を投じる展開もあってサスペンスも上々である。ただ、ヒロインがそこまでモテる理由がよくわからん(苦笑)。
『岡田鯱彦探偵小説選I』の感想でも書いたけれど、岡田鯱彦はしっかりドラマを作り上げ、できるだけ犯罪に巻き込まれた人々の心理を描いてくれるのがいい。もちろんミステリなので制限はあるが、逆にミステリとしていまひとつであっても物語として惹きつけるものがある。
ミステリ史上においても『薫大将と匂の宮』という記憶に残る作品を描いているわけだし、もう少し知名度が上がって、残る作品も復刻されると嬉しいのだが。けっこう好きな作家だけに残念なことだ。
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