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 読書好き、とりわけ物語が好きな人であれば、子ども時代に一度はお世話になったのが〈岩波少年文庫〉だろう。その岩波少年文庫が創刊七〇周年を記念して発刊されたのが、『岩波少年文庫のあゆみ』である。
 想定される読者はかつての少年少女たちで、大きく分けると岩波少年文庫の歴史を追った前半、人気作を中心にした内容紹介とエッセイ、後半は年譜と総目録という構成。まさに岩波少年文庫の七十年を振り返る一冊である。

 岩波少年文庫のあゆみ

 やはり面白いのは、創刊に至るまでと、創刊当初のエピソードを詰め込んだ前半だろう。戦後がそろそろ落ち着いた昭和二十五年当時、関係者たちがどういう志を持ち、それを具現化するために、どういう試行錯誤を重ねていったかが語られてたいへん興味深い。
 編集的な視点はもちろんだが、時代の流れに合わせて、ある程度は経営的な感覚も必要だったはずで、それに振り回されつつも何とか妥協できるところは妥協しつつ、最善をつくしているわけで、岩波書店といえどもその苦労は大きかっただろう。
 当初は二人しか専任者がいなかったとか、ルビや漢字の開きの問題とか、新刊の中断とか、紙や装丁をグレードダウンせざるを得なかった状況とか、児童書ならではの難しさがあるわけで、管理人も長らく子供向けの本を作ってきた経験があるので、その苦労はすごく理解できる。

 しいていえば、本編やエッセイ、書籍紹介が、こまめに編まれているので、レイアウトも含めて、少々落ちつきのない感じを受けた。
 判型も大きくはないので、そこはもっと普通に流してもよかったのではないかな。まあ、好みもあるけれど。

ともあれ当事者たちの生の声は、出版関係者ならずとも本好きならば間違いなく引きこまれるはずだ。〈岩波少年文庫〉になにかしらの思い出がある人はぜひどうぞ。

 ちなみに管理人の思い出の一冊は『トムは真夜中の庭で』になるかな。大人になってから、ネットで知って読んだ一冊だが、普通に驚かされたのが懐かしい。


テーマ:評論集 - ジャンル:本・雑誌




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