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 ジョン・グリシャムの『「グレート・ギャツビー」を追え』を読む。
 グリシャムの作品は久しぶりで、前回読んだのはなんと十五年前の『スキッピング・クリスマス』。もともと嫌いな作家ではなく、日本での初紹介となる『法律事務所』以来、グリシャムの作品は出るたびに読んでいたのだが、次第にご無沙汰になってしまった感じだ。
 別につまらないから読まなくなったわけではない。管理人としては、法廷ものといえばどうしても法廷における弁護士と検察の知的対決を期待してしまうのだが、グリシャムの場合は法廷ものというよりリーガル・サスペンス。司法を舞台にしてはいるが、その内容は法廷対決に縛られるわけではなく、全体的なエンタメ要素やストーリーの面白さで読ませるタイプなのだ。
 それはそれで面白いのだが、ちょっと自分の興味とずれてきたのと、一時期、それこそグリシャムの影響か、リーガル・サスペンスが増えすぎて飽きてきたのが、疎遠になった大きな理由である。トドメはグリシャムの日本での版元がアカデミー出版に移ったことで、それが決定打になった記憶もある。
 その後はグリシャムには珍しいホームコメディ『スキッピング・クリスマス』だけは読んだが、それがなんと十五年なのである。

 ではなぜ久々にグリシャム作品を読んだかというと、訳者が村上春樹であること、内容がフィッツジェラルドの生原稿強奪事件をテーマにしているだけでなく、作家や書店、稀覯書マニアなどの裏側を描くビブリオ・ミステリであること。グリシャムだって、かつては好きで呼んでいた作家なので、まあ、これだけのパワーワードが揃っていれば、とりあえず読むしかないよなぁ。

 「グレート・ギャツビー」を追え

 こんな話。プリンストン大学の図書館で厳重に保管されているフィッツジェラルドの直筆原稿が、五人組の犯罪者によって強奪された。一見、完全犯罪に思えたが、犯人の一人が現場で負傷したことで、その血痕からFBIは二人を逮捕することに成功する。しかし、肝心の原稿は発見されなかった。
 一方、FBIとは別に独自ルートで調査を進める会社があった。彼らが目をつけたのは、フロリダのカミーノ・アイランドで独立系書店を営む稀覯書収集家ブルース・ケーブル。強奪犯ではないが、彼は何らかの伝手で原稿を入手していると思われた。真相を確かめるため、調査会社は生活に困っている新人作家マーサーを送り込むが……。

 ううむ、まあまあ面白いけれど、ちょっと期待しすぎたかな。グリシャムがフィッツジェラルドについて書いたというのなら、そこまで期待しなかったのだろうけれど、なんせ村上春樹が噛んでいるしなぁ(苦笑)。
 基本的には「グレート・ギャツビー」を強くプッシュした作りの本ではあるのだが、それがそもそもずるい。確かに直筆原稿が盗まれはするが、それがストーリーのテーマや根本的な部分とはまったく絡まない。また、強奪犯も筋金入りのプロフェッショナルかと思いきや、大物感もなく、つまらないミスばかりして何の見せ場もない。結局は頭の切れる書店経営者と、スパイとして送り込まれる新人女性作家の、腹の探り合いと恋愛模様に終始してしまっている。盗まれた原稿はフィッツジェラルドでなくても全然かまわないのである。

 読みやすさやテンポは悪くなく、それこそ最初に書いたようにアメリカの作家や書店、稀覯書マニアの描写はなかなか興味深い。ただ、エンターテインメントとしてはともかく、それらがミステリの質にはさほど貢献しておらず、残念ながらグリシャムの興味はそこにはなかったようだ。
 ちなみに本作のある登場人物を主人公にして、続編、しかもこちらはハリケーンの夜に起こる作家殺害事件を描くミステリのようで、ううむ、もう一度騙されそうだ。

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テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌





>ハヤシさん

書店経営については面白いので、どうせならそっちに軸足を置いて書店経営小説にすればよかったのにと思います。
もしくはマーサを中心とした新人作家物語でもいいです。

ただ、グリシャムの責任というよりは、中公の売り方が卑怯です(笑)。個人的には村上春樹の文章は翻訳の方が好きだったりするので、その村上春樹がミステリ訳したら、そりゃ読んじゃいますよねぇ。
なんだかんだ言いながら、続編もたぶん読んじゃいますよ(爆)。
【2021/05/04 22:59】 URL | sugata #8Y4d93Uo[ 編集]

この作品、アメリカの書店経営や稀覯本ビジネスの内幕の描写は非常に面白かった。ロマンティックコメディの傑作となるには往年のデイヴィッド・ハンドラーのような才気がグリシャムには足らなかったという印象。続編も村上春樹が訳すのでしょうか?(笑)
【2021/05/04 22:46】 URL | ハヤシ #-[ 編集]















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