- Date: Tue 01 06 2021
- Category: 評論・エッセイ 書評七福神
- Community: テーマ "評論集" ジャンル "本・雑誌"
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書評七福神/編著『書評七福神が選ぶ、絶対読み逃せない翻訳ミステリベスト2011-2020』(書肆侃侃房)
『書評七福神が選ぶ、絶対読み逃せない翻訳ミステリベスト2011-2020』を読む。翻訳ミステリのファンなら、「翻訳ミステリー大賞シンジケート」というサイトは当然ご存知だろうが、その中で七人の書評家による新刊レビューのコーナーがあり、本書はその連載十年分をまとめたものだ。
だから読んだとはいっても、ザクっと全体に目を通し、気になるところを拾い読みした程度なのでご承知あれ。

さて、書評七福神の内訳だが、川出正樹/北上次郎/酒井貞道/霜月蒼/杉江松恋/千街晶之/吉野仁の七名。ただこのメンバーで固まる前の最初期には、池上冬樹、村上貴史の両氏もおり、それが諸事情(?)で降板している。先の七名で固定化されたのが2011年5月のレビューからということで、本書ではそれ以降のレビューを掲載している。
まあ、どうせなら最初から載せればいいのにと思いつつ、それぞれの事情はあるのだろうし、また、そんな事情とは別に、初期のレビューはほんの数行で済ませて内容に踏み込んだレビューが少なかったこともあるので、区切りを付けたのはある意味正解だろう。それにどうしても読みたければ、そもそもネットでは全レビューが残っているはずなので、そちらを読めばいいわけだし。
ついでに書いておくと、ネットでタダで読めるものをわざわざ本にする必要があるのかと、疑問に思う向きがあるかもしれないが、個人的には本という形にするだけでも大いに意義はあると思う。
中身に関しては特に文句のつけようもない。それぞれ得意分野の異なるミステリの目利き七人が、旬のミステリをこぞって挙げているのだ。ましてや弱めの最初期のレビューは割愛しているのだから(笑)、これは役に立たないわけがない。
特別変わったことをやっているわけではなく、各人がその月読んだ面白い新刊、おすすめの新刊をシンプルにプッシュしていること、それがいいのだろう。だから月によってはおすすめの作品がダブることもあり、それだけ信頼度も高くなる。
その一方でメジャーな作品や作家に関してはあえて執着せず、ミステリファンに届きにくい、ややマイナーどころを各人がプッシュしているのもいい。そういう作品を紹介できるかどうかが、書評家の腕の見せどころでもあるわけで、これがあるから本書の価値も高くなるのだ。
ただ現状では、強いていえば本格、とりわけクラシックの採り上げられ方が少なく、一人ぐらいはそちら系のメンバーを入れてもいいのになとは思う。
たまにアレッと思う作品が紹介されているのはご愛嬌か。レビューを信じて読んだものの、意外に大したことのない場合もあるので、そこは読者が自己責任で判断するしかないだろう(笑)。
まあ、マイナーどころを狙いすぎると、どうしても評価が分かれる作品が出てくるのは致し方あるまい。むしろ、そこは書評家の個性、味だと思えばよろしい。
一番いいのは自分と好みが似ている書評家を参考にすることだが。個人的には池上冬樹がお気に入りだったので、早々の降板はちょっと残念だった記憶がある。
ともあれ、このボリュームと内容は、冗談抜きで向こう十年ぐらいは役に立つと思うが、気になる点を一つだけ。それは著者名索引での、ドイツ人名などに使われるvon(フォン、ヴァン)の扱い。
vonは姓の一部なので、索引に載せる際は姓に入れないとダメではなかったか。たとえば、「シーラッハ, フェルディナント・フォン」という表記は誤りで、正しくは「フォン・シーラッハ, フェルディナント」だと思うのだが。管理人も自信がないので、ご存知の方はご教授ください。
だから読んだとはいっても、ザクっと全体に目を通し、気になるところを拾い読みした程度なのでご承知あれ。

さて、書評七福神の内訳だが、川出正樹/北上次郎/酒井貞道/霜月蒼/杉江松恋/千街晶之/吉野仁の七名。ただこのメンバーで固まる前の最初期には、池上冬樹、村上貴史の両氏もおり、それが諸事情(?)で降板している。先の七名で固定化されたのが2011年5月のレビューからということで、本書ではそれ以降のレビューを掲載している。
まあ、どうせなら最初から載せればいいのにと思いつつ、それぞれの事情はあるのだろうし、また、そんな事情とは別に、初期のレビューはほんの数行で済ませて内容に踏み込んだレビューが少なかったこともあるので、区切りを付けたのはある意味正解だろう。それにどうしても読みたければ、そもそもネットでは全レビューが残っているはずなので、そちらを読めばいいわけだし。
ついでに書いておくと、ネットでタダで読めるものをわざわざ本にする必要があるのかと、疑問に思う向きがあるかもしれないが、個人的には本という形にするだけでも大いに意義はあると思う。
中身に関しては特に文句のつけようもない。それぞれ得意分野の異なるミステリの目利き七人が、旬のミステリをこぞって挙げているのだ。ましてや弱めの最初期のレビューは割愛しているのだから(笑)、これは役に立たないわけがない。
特別変わったことをやっているわけではなく、各人がその月読んだ面白い新刊、おすすめの新刊をシンプルにプッシュしていること、それがいいのだろう。だから月によってはおすすめの作品がダブることもあり、それだけ信頼度も高くなる。
その一方でメジャーな作品や作家に関してはあえて執着せず、ミステリファンに届きにくい、ややマイナーどころを各人がプッシュしているのもいい。そういう作品を紹介できるかどうかが、書評家の腕の見せどころでもあるわけで、これがあるから本書の価値も高くなるのだ。
ただ現状では、強いていえば本格、とりわけクラシックの採り上げられ方が少なく、一人ぐらいはそちら系のメンバーを入れてもいいのになとは思う。
たまにアレッと思う作品が紹介されているのはご愛嬌か。レビューを信じて読んだものの、意外に大したことのない場合もあるので、そこは読者が自己責任で判断するしかないだろう(笑)。
まあ、マイナーどころを狙いすぎると、どうしても評価が分かれる作品が出てくるのは致し方あるまい。むしろ、そこは書評家の個性、味だと思えばよろしい。
一番いいのは自分と好みが似ている書評家を参考にすることだが。個人的には池上冬樹がお気に入りだったので、早々の降板はちょっと残念だった記憶がある。
ともあれ、このボリュームと内容は、冗談抜きで向こう十年ぐらいは役に立つと思うが、気になる点を一つだけ。それは著者名索引での、ドイツ人名などに使われるvon(フォン、ヴァン)の扱い。
vonは姓の一部なので、索引に載せる際は姓に入れないとダメではなかったか。たとえば、「シーラッハ, フェルディナント・フォン」という表記は誤りで、正しくは「フォン・シーラッハ, フェルディナント」だと思うのだが。管理人も自信がないので、ご存知の方はご教授ください。
おお、ありがとうございます。私も調べてみましたが、ドイツのvonは今では貴族の称号であり、姓の一部という認識でいいみたいですね。
ただ、元々は前置詞として「〜出身」を意味していたようで、オランダやオランダ系の人のvonは、現在でもこちらの意味で使うようです。ベートーベンもこちらですね。
Sirは、さー、どうなんでしょう(爆)