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 大下宇陀児の『夜光魔人』を読む。かつて小学館が発行していた『中学生の友』。その昭和三十一年七月号の付録としてついていた小冊子を湘南探偵倶楽部さんが復刻したものだ。
 ちなみにこの『中学生の友』の付録小冊子だが、「中学生新書」というシリーズ名、しかも通し番号までついていて、マニアの収集癖を刺激すること夥しい(笑)。ネットでザクっと調べたところ、乱歩の『幽霊塔』や黒沼健の『ラドンの誕生』、『遊星人現わる』などは確認できたが、全ラインナップはどうなっているんだろう?

 夜光魔人

 それはともかく。『夜光魔人』だがこんな話。
 いま、世間を騒がせている「夜光魔人」。美術品や宝石を狙う盗賊だが、暗がりで怪しく光るその姿が人々を恐怖に陥れている。中学生の藤村信吉少年も気にはなっていたが、三人組の不良少年とトラブったり、トラックに轢かれそうになった少女を救ったりと、「夜光魔人」どころではない。ところが三人組の不良少年のリーダー・今村が夜光魔人と関係あるのではないかと考え、信吉少年は新聞記者をしている兄の信太郎に相談しようとするが……。

 当時の子供向け探偵小説の王道ともいえる怪人もの、しかもボリュームも中編ぐらいはあるので、けっこう期待したのだが、ううむ、これはちょっと残念な感じである。
 せっかく「夜光魔人」という面白そうなキャラクターを作りながら、事件がなんとも小粒。というかストーリーがちょっと不可解で、主人公、夜光魔人ともにほぼ見せ場がないのである。そもそも主人公と夜光魔人の対決シーンすらないのはいかがなものか。事件解決も主人公とは関係ないところで進んでしまい、これには当時の子供たちもちょっと拍子抜けだったのではないだろうか。
 まあ著者の狙いはわからないではない。学習誌での掲載ということもあるし、まだ戦後を引きずる社会事情を取り込みつつ、おそらくはヒューマン・ドラマに仕上げたかったのだろう。登場する子供たちの設定や、ラストの決着のつけ方もそれを反映している。
 ただ、そちらを意識しすぎたか、主軸が信吉少年と子供たちのドラマに流れすぎて、いまひとつカタルシスに欠けた一作となってしまったようだ。
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テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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