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 田中小実昌のミステリ短篇集『幻の女 ミステリ短篇傑作選』を読む。著者の作品は随分前に短編をいくつか読んだぐらいで、あまりよい読者ではないのだけれど、ミステリの翻訳者としてはずいぶんお世話になっている。なんでもポケミスを中心に八十冊ほどの訳書があるそうで、あらためて聞くとちょっと驚きである。

 幻の女

「たたけよさらば」
「幻の女」
「タイムマシンの罰」
「えーおかえりはどちら」
「犯人はいつも被害者だ」
「洋パン・ハニーの最期」
「海は眠らない」
「ベッド・ランプ殺人事件」
「先払いのユーレイ」
「悪夢がおわった」
「氷の時計」
「C面のあるレコード」
「動機は不明」
「11PM殺人事件」
「部分品のユーレイ」

 収録作は以上。ミステリ傑作選と謳ってはいるが純粋な意味でのミステリではなく、ネットで異色作家という紹介も見かけたが、それもまた微妙に違う感じを受ける。
 確かにミステリのスタイルを拝借しているし、エロやナンセンス、恐怖で味つけしているので、一見、トンデモ系異色作品揃いという感じはするのだが、根っこはむしろ昭和の風俗小説ではないか。夜の街で蠢く人々の、哀しくも可笑しい出来事を描いた昭和の風俗小説である。本書には突飛な設定の作品も多いのだけれど、管理人的には物語上で何が起こっているのかという興味より、それによって右往左往する男女の姿に引き込まれた。

 文体、語りの軽さも効果的である。作中でとんでもない事件が起こっていても、ことさらシリアスに描くのではなく、あくまで飄々と描く。その自然な軽さがよい。
 著者は元々インテリながら、若い頃からドロップアウトして米軍基地や水商売、風俗などで働いている。そういった場所で知り合った人々のものの見方や考え方が、おそらく著者にも、そして創作にもストレートに影響しているのではないか。
 ただ、全体的な雰囲気や語り口は管理人のような昭和世代にはかなりツボなのだが、ユルイといえばユルイし、今の若い人にどの程度受け入れられるか、ちょっと気になるところである。


テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌




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