- Date: Sat 17 07 2021
- Category: 評論・エッセイ 北上次郎
- Community: テーマ "評論集" ジャンル "本・雑誌"
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北上次郎『阿佐田哲也はこう読め!』(田畑書店)
『色川武大・阿佐田哲也電子全集』(小学館)の完結にともない、田畑書店から発売された二冊の関連本。一冊はすでに読み終えた『色川武大という生き方』、残る一冊が本日の読了本『阿佐田哲也はこう読め!』である。
『色川武大という生き方』はさまざまな作家、文学者、友人知人などによる色川武大との思い出を語ったもので、どちらかといえば気軽なエッセイ集といった感じであったが、本書は文芸評論家・北上次郎による真っ向勝負の作品論となっている。

個人的には色川作品よりも阿佐田作品の方に早くから触れ、その面白さにどっぷりとハマった人間なので、阿佐田哲也に関するまとまった文章を読めたことがまず嬉しい。なんせあれだけ一世を風靡し、色川武大名義を含めて今なお人気も高い作家でありながら(実際、全集も出ているぐらいだし)、不思議なことに雑誌の特集などはともかく、単行本でのガイドブックや評論の類は非常に少ない。それだけでも本書は貴重な一冊と言えるのだが、内容も期待を裏切らない。
著者がギャンブルにも造詣が深い北上次郎というのがピタリとハマった感じはある。当たり前の話だが、阿佐田哲也のギャンブル小説はギャンブルの面白さや怖さを描きながら、その向こうにギャンブラーたちの生き様を炙り出す。著者はそんなギャンブラーの描写のディテールをピックアップし、その意味するところを解説する。
特に第一章の「『麻雀放浪記』はこう読め!」は引き込まれる。まあ、阿佐田哲也の面白い小説はいろいろあるが、やはり『麻雀放浪記』四部作は圧倒的。その『麻雀放浪記』を例にしてディテールの面白さを語り、全四部となる同作の意味にまで発展させてゆく。
たとえば「配牌(ハイパイ)の不自然さから対面(トイメン)の男に注目する」とか「卓を囲む人物を紹介しない」とか、のっけから目鱗の連続で、もちろんそれらの解釈がまたよろしい。
また、四部作がピカレスクロマンとして位置づけられるのは三番目の「激闘篇」があるからだとか、管理人が読んでいた当時はここまで深く考えていなかったが、言われてみると確かにそのとおりで、久々に背中がゾゾっとする感じを味わった。
阿佐田哲也を読んだことがないという人は、やはり麻雀に興味がないから、というケースが多い。だが阿佐田哲也の小説、とりわけ『麻雀放浪記』については麻雀を知らずとものめり込めるはず。少なくともノワールやピカレスクロマンに興味がある人は読んで損はない。それでも興味がわかなければ、それこそ本書の第一章でも読めば、思い切り背中を押してもらえることは間違いない。
『色川武大という生き方』はさまざまな作家、文学者、友人知人などによる色川武大との思い出を語ったもので、どちらかといえば気軽なエッセイ集といった感じであったが、本書は文芸評論家・北上次郎による真っ向勝負の作品論となっている。

個人的には色川作品よりも阿佐田作品の方に早くから触れ、その面白さにどっぷりとハマった人間なので、阿佐田哲也に関するまとまった文章を読めたことがまず嬉しい。なんせあれだけ一世を風靡し、色川武大名義を含めて今なお人気も高い作家でありながら(実際、全集も出ているぐらいだし)、不思議なことに雑誌の特集などはともかく、単行本でのガイドブックや評論の類は非常に少ない。それだけでも本書は貴重な一冊と言えるのだが、内容も期待を裏切らない。
著者がギャンブルにも造詣が深い北上次郎というのがピタリとハマった感じはある。当たり前の話だが、阿佐田哲也のギャンブル小説はギャンブルの面白さや怖さを描きながら、その向こうにギャンブラーたちの生き様を炙り出す。著者はそんなギャンブラーの描写のディテールをピックアップし、その意味するところを解説する。
特に第一章の「『麻雀放浪記』はこう読め!」は引き込まれる。まあ、阿佐田哲也の面白い小説はいろいろあるが、やはり『麻雀放浪記』四部作は圧倒的。その『麻雀放浪記』を例にしてディテールの面白さを語り、全四部となる同作の意味にまで発展させてゆく。
たとえば「配牌(ハイパイ)の不自然さから対面(トイメン)の男に注目する」とか「卓を囲む人物を紹介しない」とか、のっけから目鱗の連続で、もちろんそれらの解釈がまたよろしい。
また、四部作がピカレスクロマンとして位置づけられるのは三番目の「激闘篇」があるからだとか、管理人が読んでいた当時はここまで深く考えていなかったが、言われてみると確かにそのとおりで、久々に背中がゾゾっとする感じを味わった。
阿佐田哲也を読んだことがないという人は、やはり麻雀に興味がないから、というケースが多い。だが阿佐田哲也の小説、とりわけ『麻雀放浪記』については麻雀を知らずとものめり込めるはず。少なくともノワールやピカレスクロマンに興味がある人は読んで損はない。それでも興味がわかなければ、それこそ本書の第一章でも読めば、思い切り背中を押してもらえることは間違いない。