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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


大下宇陀児『爪』(湘南探偵倶楽部)

 ヘビーな一冊を読んだので、次はさっぱりと小冊子で。ものは湘南探偵倶楽部さん復刻の短篇、大下宇陀児の『爪』。

 爪

 作家の沖野はピアニストの住谷良子に想いを寄せていたが、内気な性格からなかなか告白までには至らなかった。そのうちに友人として紹介した理学博士の竹中が、いつの間にか沖野を出し抜いて彼女と交際していることを知る。嫉妬を募らせる沖野だったが、ある日、竹中の研究室で破傷風菌を扱っていること、さらには戸締まりをしていないと飼い猫が勝手に研究室へ入ってしまうことを知り、殺人計画を思いつく。竹中が破傷風菌のついた猫の爪で引っかかれたように装い、殺してしまおうというのだ。完全犯罪は成功したかに思えたが……。

 きれいにまとまった倒叙もので、見どころは犯人の沖野と探偵役の弁護士のラストでの対決。完全犯罪を為しえたかに見えた沖野だが、ジリジリと弁護士に追い詰められる。沖野の焦燥ぶりと弁護士の冷静さがいい対比で描かれ、ちょっと乱歩の「心理試験」を思い出した。
 犯人のトリックが弱い点は目をつむるとして、それを逆手にとる弁護士の逆トリックが悪くない。

 宇陀児の作品は倒叙から犯罪小説まで、けっこう犯人から見た短篇が多いように思うが、そういう作品を集めた宇陀児傑作選があってもいいかなと思った次第。
 なお、本作は国書刊行会の〈探偵くらぶ〉にある『烙印』でも読むことができる。管理人も過去に二回ほど読んでいるはずだが、すっかり中身を忘れていた(笑)。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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