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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


『このミステリーがすごい!』編集部/編『このミステリーがすごい!2022年版』(宝島社)

 『このミステリーがすごい!2022年版』が出ていたので買って帰る。昨日は「ミステリーベスト10」が発表された『週刊文春』も出ており、先日の『ミステリマガジン』と合わせて、早くも三つのベストテンが出揃ってしまった。

 このミステリーがすごい!2022年版

 パラパラと中身を見たが、まあ、いつもどおりではある。「私のベスト6」と「我が社の隠し球」は情報として参考になるが、いわゆる企画記事はないに等しい。もちろん作家さんのインタビュー等はあるけれど、そういうのは企画とは言わない。そもそも一位を獲得した作家へのインタビューはいいとして、なぜそれを差し置いて、畑違いの人のインタビューを巻頭に載せるかな。ベストテンで商売するなら1位の作家には敬意を払うべきだし、これはさすがに失礼だろう。
 唯一、企画らしい企画もないではない。それが「館ミステリー座談会」なんだけど、これも出席する若手作家に罪はないが、如何せんネタの振り幅が狭くて、もう少しバラエティに富んだ人選でないと話が広がらない。それをサポートする記事もあるにはあるが、2ページほどなので駆け足の作品紹介で終わっていて物足りない。
 今の形はどう見ても、最初から毎年の台割が決まっていて、それに沿って記事をもらってくるだけのように思える。ともかく編集者は、まずその年のテーマなりコンセプトをしっかり固めた方が良い。前年やその年の作品傾向をしっかり分析して、旬のテーマを決める。それさえ決まれば、あとはどう形にするか考えるだけだろうに。

 ただ、少しだけ彼らの立場で考えると、非常に手間がかかる本であることは想像に難くない。なんせ、作家や評論家、書評家、出版社、関係団体……やりとりや確認する相手が多すぎる。これは確かに面倒だ。おそらく締め切りとか守らない輩も多いだろう(苦笑)。
 おそらく省力化しにくいタイプの本であり、基本的に力技で乗り切らなければならない作業が多いのだろう。それでいて(ここは偉いところだが)、価格はかなり抑えている。当の編集者にしてみれば、「これ以上、企画を考えるとか、勘弁してくれ」というのが正直なところなのだろう。
 ただし、そうは言っても無策のままでは困るわけで、ここは値段を上げてでもいいから、少し人や企画、増ページにお金を使った方がいいのではないか。

 肝心のランキングについては、ほか二つのランキングと大きな差はなく、これも例年どおりで面白くない要素の一つだろう。今年は『ミステリマガジン』の「ミステリが読みたい!」で、とうとう異なる1位が出て少しホッとしたけれど、それでもツートップは同じだからなぁ。むしろ各ランキングの特徴は十位以降から顕著であり、この辺りは後日また。

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Comments

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ポール・ブリッツさん

酷いとまでは言いませんが、せっかくのコンテンツを持っているのに、なんだか使い方をわかっていないのが歯痒いですね。

Posted at 10:28 on 12 04, 2021  by sugata

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「このミステリー界がむごい!」(ちがう)

Posted at 23:47 on 12 03, 2021  by ポール・ブリッツ

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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