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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


楠田匡介『人肉の詩集』(湘南探偵倶楽部)

 本日も湘南探偵倶楽部の復刻短篇を読む。ものは楠田匡介の『人肉の詩集』。けっこう有名な短篇だが、同作を表題にしたあまとりあ社の短篇集がいかんせん高価なので、これまで縁がなかった作品。

 人肉の詩集

 こんな話。主人公の〈私〉は詩の同人活動をしていたが、そのパトロンである津田政輔の妻、香代子と不倫関係にあった。ある日、津田が旅行に出た隙を狙って不倫旅行に出かけた私たちだが、その旅先で香代子は津田の気配を感じたという。そして、これまで香代子が不倫してきた相手、加えて前妻までもが全員、残酷な手段で殺されたのだと告白した。最初は信じられなかった私も、やがて津田の魔手に……。

 殺人の最大の証拠でもある死体をどのように隠すのか。そんなテーマのミステリはいろいろあるが、えげつない死体隠蔽の方法を考えた作家も少なくない。すぐ思い浮かぶのはダンセイニの「二壜の調味料」、妹尾アキ夫の「人肉の腸詰」あたりだが、どちらも正直グロテスクなネタで、本作ももちろんその系統である(笑)。しかも、えげつなさはその二作に勝るとも劣らない。
 「人肉の詩集」というタイトルがすべて、といっても過言ではなく、主人公が囚われてからの津田のワンマンショーは圧巻。いや、よくこんなこと考えるよなぁ。ラストでシリーズ探偵の田名網警部が登場し、一応物語に決着をつけてはくれるが、取ってつけたような感じは否めない。内容が内容なだけに、おそらくはきちんとケリを付ける必要があったのかもしれない。
 それにしても楠田匡介はジュヴナイルからシリアス、エログロまで、本当に幅が広い作家である。
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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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