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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


久生十蘭『無月物語』(現代教養文庫)

 三ヶ月ほど前に受診した人間ドックの結果を受けて再検査にいく。幸い大したことにはならなそうだが、年も年なので、もう少し健康には気を配らなければならないのだろう。嫁さんからももう一つ保険に入れと言われているのだが、保険ってなんでああも種類が多いのか。検討するのも一苦労で、なかなかそんな時間がとれないんだよな。

 久生十蘭の『無月物語』を読む。今は無き現代教養文庫「久生十蘭傑作選」の最終巻で、歴史物を集めた一冊だ。まずは収録作から。

「遣米日記」「犬」
「亜墨利加討」「湖畔」
「無月物語」「鈴木主水」
「玉取物語」「うすゆき抄」
「無惨やな」「奥の海」

 気に入った作品は、まず「亜墨利加討」。馬鹿囃子好きが高じて役職を棒に振った男の数奇な運命を描いた作品で、ちょっと山風を連想させる設定と展開にニヤリ。
 きれいにまとめすぎた嫌いはあるが、愛犬をめぐってフランス人と対決する羽目になる男の話、「犬」も悪くない。
 ある殿様の睾丸が巨大化するという病の顛末を描く「玉取物語」には爆笑。しかしコミカルなテーマの中にも、当時の医学者の悩める独白がなかなか感動的だ。
 ベストは「湖畔」。人を愛すること、人を信じることのできないある貴族は、ついに自分の妻に手をかけるが、その後の展開がまた強烈。男を描きつつ、実は一途な恋に生きる女を描いているのだという、都筑道夫の解説もうまいなあ。
 とまあ、歴史物と一口に言ってもアプローチがさまざまで、コミカルさを押し出したものや、あくまで美しく叙情的にまとめたものなど幅広い作品集。文体も歴史物となると少し他の作品の印象とは異なり、やや抑え気味というか柔らかい感じを受ける。読み手にそれなりに覚悟と読み解くレベルが必要な十蘭作品ではあるが、もしかすると歴史物は割に十蘭入門作品としては悪くないのかもしれない(ただ、この一冊だけだと十蘭本来のイメージは伝わりにくいかも)。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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