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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

ポール・アルテ『怪狼フェンリル』(行舟文化)

 『混沌の王』の付録小冊子として付いてきた「怪狼フェンリル」を読む。
 本編同様、こちらも雪密室もの。雪の降り積もった朝のこと、狼の仕業としか思えない婦人の死体が発見され……という一席。
 雪の山荘的な舞台装置といい、けっこうな数の登場人物といい、さらっと流してはいるが、しっかり書き込めば長編でも通用しそうな贅沢な作りである。フェンリルを用いた雰囲気作りもよくて、トリックこそずばぬけたものではないにせよ、全体的にうまく収まった感が気持ちよい。個人的な好みではあるが、アルテはやりすぎないくらいでちょうどいい。

 怪狼フェンリル

 ところで行舟文化のアルテ作品にはこうして毎回、付録小冊子がついてくる。これはもともと出版社立ち上げと、その小さな版元がアルテ本を連続して刊行すること、この二つを軌道に乗せるためのロケットスタートという意味合いが強かったように思う。
 効果がどの程度あったのか、それは当の版元ではないので不明だが(でもアルテ本が順調に出ているので成功したと思いたい)、もうそろそろ止めてもいいのでは、とちょっと思ってしまった。
 もちろん読者としては本当に嬉しいサービスなのだが、もともと定価も抑えた本だし、それに付録小冊子をつけてビニールで梱包して売るのは、ずいぶん手間も費用もかかるのではないかと、人ごとながら心配になってしまったのだ。短篇は本編に一緒に収録する手もあるし、ファンだってそれでも十分ボーナストラックとして喜んでくれるのではないか。
 「いやいや、小冊子にするから売上が伸びるのだし、負担なんて大したことない。それに最後に小冊子の短篇をまとめて短篇集にすることだってできる」」というのならもちろんガッツリやってもらってOK。ただ、コツコツがんばってくれている出版社さんなので、あまり無理しないで、ちゃんと利益を出してもらいたいなと素直に思った次第である。
 まあ、よけいなお世話としかいいようがないのだけれど(苦笑)。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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