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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


ロアルド・ダール『チョコレート工場の秘密』(評論社)

 ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演による『チャーリーとチョコレート工場』が上映中だが、原作はもちろんロアルド・ダールの『チョコレート工場の秘密』。ミステリファンには奇妙な味の短編集『あなたに似た人』が知られているが、世間一般では『チョコレート工場の秘密』の方が遙かに有名だろう。なんせイギリスの子供の間では、ハリポタや指輪物語と並ぶほどの人気が今もあるという。とまあ、こんな知ったかぶりを書いているくせに、恥ずかしながら実は未読。映画の前に読んでおきたいということで、本日の読了本は『チョコレート工場の秘密』である。

 「ワンカ製のチョコレートに入っている5枚のゴールデンチケット。これを引き当てた5人の子供たちを、チョコレート工場見学にご招待」。世界でもっとも有名で、もっとも謎に包まれたウィリー・ワンカのチョコレート工場。この秘密が明かされるというので、世界中は大興奮。主人公のチャーリー・バケツ少年も当然見学はしたいけれど、家が貧しくてチョコレートなど年に1回の誕生日にしか買ってもらえません。でも誕生日はもうすぐ。1回のチャンスに家族中が期待しますが、果たして結果は? そしてチョコレート工場の秘密とは?

 あらすじを書いてみたけど、なんだかピンとこないな。とにかくこの面白い物語を今まで読まなかった不明を恥じるのみ。魅力的なストーリーに傑作なキャラクターたち、想像力の見事さ。そして忘れちゃいけないブラックな味つけ。児童書なので最低限の教訓はキープしているが、刺激の強さは半端じゃない。ダールは大人向けの作品でもブラックユーモア色の強い作品が多いが、それは児童書においてもまったく損なわれてはいない。それどころかテンポのよい文章やコミカルなセリフ、歌などが相まって、いっそうイキイキとした印象を受ける。傑作です。

 なお、今回読んだのは、ロアルド・ダール コレクションとして出た柳瀬尚紀訳のもの。柳瀬氏ならではのこだわりある翻訳とあとがきがグー。映画と固有名詞が違うけれど、読むならこちらがおすすめ。

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sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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