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E・W・ホーナング『最後に二人で泥棒を』(論創海外ミステリ)
E・W・ホーナング『最後に二人で泥棒を』読了。怪盗ラッフルズ・シリーズの三番目の、そして最後の短編集である。
第一短編集の『二人で泥棒を』を読んだときの印象は、正直イマイチだった。こちらが勝手な先入観でルパンのような内容やレベルを予想していたこともあり、ミステリ的な弱さばかりが気になってしまったからである。ところが続く『またまた二人で泥棒を』、そして本作と読んできて、少々その印象が変わりつつある。
とりあえず本作の魅力がラッフルズの冒険にあることは確かだ。たとえラッフルズがアマチュアであり、さらには謎解き興味が希薄だとしても、興味の中心は犯行をいかに成し遂げるか、という点にあることは間違いないところだろう。
ただ、このシリーズで作者が本当に書きたかったのは、むしろラッフルズと相棒バニーの二人の友情や生き方だったのではないか。もちろんホームズものの大ヒットを受けて書かれたシリーズ作品だから、主要登場人物のキャラクター性は重要だ。だがラッフルズ物では、単なるキャラクター作りの枠を超えて、青春小説のような趣すらある。さらに風呂敷を広げるなら、閉塞感の漂う当時のイギリスの若者に向けた作者のメッセージであり、あるいは教養小説のようなものを目指していたのではないだろうか?
そう考えれば『二人で泥棒を』や『またまた二人で泥棒を』の最終話が、それぞれ異質な形で幕を閉じることにも合点がいくし、本書の特殊な構成も理解できるのだ。
第一短編集の『二人で泥棒を』を読んだときの印象は、正直イマイチだった。こちらが勝手な先入観でルパンのような内容やレベルを予想していたこともあり、ミステリ的な弱さばかりが気になってしまったからである。ところが続く『またまた二人で泥棒を』、そして本作と読んできて、少々その印象が変わりつつある。
とりあえず本作の魅力がラッフルズの冒険にあることは確かだ。たとえラッフルズがアマチュアであり、さらには謎解き興味が希薄だとしても、興味の中心は犯行をいかに成し遂げるか、という点にあることは間違いないところだろう。
ただ、このシリーズで作者が本当に書きたかったのは、むしろラッフルズと相棒バニーの二人の友情や生き方だったのではないか。もちろんホームズものの大ヒットを受けて書かれたシリーズ作品だから、主要登場人物のキャラクター性は重要だ。だがラッフルズ物では、単なるキャラクター作りの枠を超えて、青春小説のような趣すらある。さらに風呂敷を広げるなら、閉塞感の漂う当時のイギリスの若者に向けた作者のメッセージであり、あるいは教養小説のようなものを目指していたのではないだろうか?
そう考えれば『二人で泥棒を』や『またまた二人で泥棒を』の最終話が、それぞれ異質な形で幕を閉じることにも合点がいくし、本書の特殊な構成も理解できるのだ。
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Comments
Edit
ラッフルズの冒険譚を三冊とも読了しました。
わたしの感想としては、
「小説として実に面白かった(^^)」
ミステリとして弱すぎるのはよくわかりますし、地味すぎるのもわかりますが、この小説は、そういうところを読むものではないのではないのでしょうか。
どちらかといえば、この小説は、「青春小説」の変形であり、その「友人とのキラキラした一瞬の時間」を犯罪行為というかたちで切り出したところに読むべき点があるのではないかと思います。
青春小説ですから、それが常にうまく行くものではないのは当たり前ですし、最後には挫折が待っています。それでも、わたしには、バニーの、自分のしたことは誇れることでもなんでもないし、現に刑務所入りなどというひどい目にも遭っているし、心身両面で多大なダメージを受けているのも認めるけれども、それでも「ラッフルズと過ごした時間はかけがえのないものだった」というメッセージがこの小説群の中から読み取れるように思えるのです。
断じて傑作とは呼べませんが、それでも時を超えて愛読されるにふさわしい作品だと思います。むしろルパンよりこちらの方が「大人の味」だと思う(^^)
Posted at 21:27 on 03 18, 2013 by ポール・ブリッツ
ポール・ブリッツさん
きっかけはともかく、ホーナングの狙いはすぐにミステリとは違うところに向いたのだと思いますね。「青春小説」というのはけっこういい線だと思いますが、西洋版の捕物帳的な味わいもあるような気がします。いうなれば青春人情話というところでしょうか。
Posted at 00:17 on 03 19, 2013 by sugata