- Date: Thu 27 10 2022
- Category: 評論・エッセイ 佐藤誠一郎
- Community: テーマ "評論集" ジャンル "本・雑誌"
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佐藤誠一郎『あなたの小説にはたくらみがない』(新潮新書)
新潮新書でちょっと面白そうな一冊が出ていたので読んでみた。佐藤誠一郎の『あなたの小説にはたくらみがない』がそれで、ベテラン文芸編集者による小説指南書である。

小説指南書といってもそこまで改まったものではなく、これまでの経験をもとに、小説家になりたいならこれぐらいは押さえておこうよ、ぐらいのカジュアルなアプローチである。ちょっと悪くいうと、山のように見てきた小説家志望に対する小言を飲み屋でグダグダこぼしている感じ(笑)。
とはいえ、内容に関しては基本的に概ね同意できることばかりである。視点や起承転結、キャラクターの話など、どれも経験や実例を挙げて解説するので面白い。そこまで深い話ではないけれど、新書という性質を考慮すればこのぐらいがちょうどいい按配なのだろう。
もちろん小説家志望者には有用なアドバイスだと思うのだけれど、ちょっとショックなのは、今どきの小説家志望者はこういうことも知らない人がいるのかということ。
なんせ帯にある「主人公が無駄にモテる/意味なく「私」が語る/キャラばかりが立つ→佳作止まりです」というコピーにしても、小説家志望であればこれぐらいは常識ではないのかなと思うのだが、今はそうでもないのか。
まあ、昔と違い、今はインターネットのおかげで誰でも作品を発表できる舞台があるし、間口が広くなったことで、まったく文章修行などしないで書いている人も多いのだろう。
ただ概ね同意できる内容ではあるものの、気になるところもないではない——たとえば小説家による小説指南書はあてにならず、編集者が最適というところ。
その根拠になるのは著者のジャンル性による守備範囲の狭さなのだが、これでいうと編集者もそこは似たようなものだ。こちらはジャンルもあるが所属する出版社・編集部の考え方に影響されることも多い。その点、さまざまな出版社・編集部と付き合いのある作家であれば、実に多様な指導を各編集者から受けることになるので、むしろ最強の小説指南書を書けるような気もする(笑)。
また、SFやホラーで有名なディーン・クーンツの『ベストセラー小説の書き方』に触れ、ミステリの動機の構成要素について自著からアトランダムに挙げて見せただけと手厳しいが、その指摘はクーンツに対して気の毒だろう。それをいうなら本書も構成はもう少し系統立ててくれた方がグンとわかりやすくなるわけで、それをやらなかったのは新書という性質を踏まえた結果だろうし、クーンツの本もそれは似たようなものだろう。
とまあ、いくつか気になるところもあれど、基本的には面白いしタメになる一冊である。どうせなら数多いる小説家志望者のために、著者はきちんとした形の小説指南書を書いてもよいのではないだろうか。もちろんそんな本を読んだからといって優れた小説が書けるとはかぎらないけれど、そういう芸術や職人のノウハウ(デビューすることや売れることも含め)を系統立てて可視化すること、アーカイブとして残すことはけっこう意義のあることだと思う。なんかマーケティングの本になりそうな気もするけれど(笑)。

小説指南書といってもそこまで改まったものではなく、これまでの経験をもとに、小説家になりたいならこれぐらいは押さえておこうよ、ぐらいのカジュアルなアプローチである。ちょっと悪くいうと、山のように見てきた小説家志望に対する小言を飲み屋でグダグダこぼしている感じ(笑)。
とはいえ、内容に関しては基本的に概ね同意できることばかりである。視点や起承転結、キャラクターの話など、どれも経験や実例を挙げて解説するので面白い。そこまで深い話ではないけれど、新書という性質を考慮すればこのぐらいがちょうどいい按配なのだろう。
もちろん小説家志望者には有用なアドバイスだと思うのだけれど、ちょっとショックなのは、今どきの小説家志望者はこういうことも知らない人がいるのかということ。
なんせ帯にある「主人公が無駄にモテる/意味なく「私」が語る/キャラばかりが立つ→佳作止まりです」というコピーにしても、小説家志望であればこれぐらいは常識ではないのかなと思うのだが、今はそうでもないのか。
まあ、昔と違い、今はインターネットのおかげで誰でも作品を発表できる舞台があるし、間口が広くなったことで、まったく文章修行などしないで書いている人も多いのだろう。
ただ概ね同意できる内容ではあるものの、気になるところもないではない——たとえば小説家による小説指南書はあてにならず、編集者が最適というところ。
その根拠になるのは著者のジャンル性による守備範囲の狭さなのだが、これでいうと編集者もそこは似たようなものだ。こちらはジャンルもあるが所属する出版社・編集部の考え方に影響されることも多い。その点、さまざまな出版社・編集部と付き合いのある作家であれば、実に多様な指導を各編集者から受けることになるので、むしろ最強の小説指南書を書けるような気もする(笑)。
また、SFやホラーで有名なディーン・クーンツの『ベストセラー小説の書き方』に触れ、ミステリの動機の構成要素について自著からアトランダムに挙げて見せただけと手厳しいが、その指摘はクーンツに対して気の毒だろう。それをいうなら本書も構成はもう少し系統立ててくれた方がグンとわかりやすくなるわけで、それをやらなかったのは新書という性質を踏まえた結果だろうし、クーンツの本もそれは似たようなものだろう。
とまあ、いくつか気になるところもあれど、基本的には面白いしタメになる一冊である。どうせなら数多いる小説家志望者のために、著者はきちんとした形の小説指南書を書いてもよいのではないだろうか。もちろんそんな本を読んだからといって優れた小説が書けるとはかぎらないけれど、そういう芸術や職人のノウハウ(デビューすることや売れることも含め)を系統立てて可視化すること、アーカイブとして残すことはけっこう意義のあることだと思う。なんかマーケティングの本になりそうな気もするけれど(笑)。
ううむ、タイトルが気になりますな(笑)