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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

ジェローム・ルブリ『魔王の島』(文春文庫)

 ジェローム・ルブリの『魔王の島』を読む。初めて読む作家さんだが、2017年にデビューしたフランス人作家で、すでに六冊ほどの著書があるようだ。本作は第三長篇となり、2019年度のコニャック・ミステリー大賞受賞作とのこと。


※ネタバレには注意しておりますが、今回の記事では伏字で処理している個所があります。それでも勘のいい人にはわかる可能性もありますので、閲覧にはご注意ください。


 まずはストーリー。トゥール大学の教室で講義を始めたヴィルマン教授。その内容は、これまでどこにも記録されていない〈サンドリーヌの避難所事件〉についてであった。
 ……サンドリアーヌという若手の新聞記者がいた。ある日、彼女はこれまで会ったこともない祖母が亡くなったことを知らされ、その遺品整理などのために、祖母が住んでいた孤島へ出かけることになる。その島ではかつて子供のためのキャンプ施設があり、祖母はそこで働いていたのだ。だが忌まわしい事件が起こり、キャンプ施設は閉鎖。今では高齢者ばかりになった元従業員が数人で暮らしていた。しかし、サンドリアーヌが島を訪れるや否や、祖母の親友が死を遂げる……。

 魔王の島

 いやあ、これはなんというか。感想を書くにあたっては比較的あまい方だと思うのだが、これはダメだ。もう今年のワーストに挙げたい(笑)。
 著者はどういうつもりで本作を書いたのだろう。たんに読者を驚かせたいから? ミステリにおける実験作として? ただ、どちらであってもこの作品はミステリとして成立しておらず、メインのネタには驚くどころか呆れるしかない。
 いわゆる●●●●と変わりはない。これが成立するなら何でも可能であり、不可能犯罪とか論理的な解決とかサスペンスとか何の意味もない。必然性があるとか厳密な設定で裏打ちできるなら認めないこともないけれど(例えばアシモフの某短篇とか)、本作に関してはそれはない。しかも、それを二回も繰り返すか?

 気になるところは他にもある。まずはルメートルの『その女アレックス』を意識したかのような構成。同じような効果を狙ってのことだろうが、そもそもの意味合いがまったく異なるので、ルメートルの着想には及ぶべくもない。
 また、過剰な演出と語りもまずい。とにかく読者に対して「匂わせる」描写や展開が多すぎるのである。いや、匂わせるどころかミステリとしては完全にアンフェアな描写も多い。個人的には「第一の道しるべ 島」が終わった時点で、あまりの突拍子もないストーリーと描写に、「これ、もしかしたら●●●●か」と思ったのだが、まさかその悪い予感が的中するとは。

 ともかく久々にひどいミステリを読んだので、これはこれで記憶に残る一冊にはなるだろう。それにしても、これでコニャック・ミステリー大賞受賞作とはなあ。信じられん。
 

Comments
 
非表示さん

記事に挙げた●●●●ではありませんし、 ●●でもありません。
アシモフの某短篇などと書いてしまったため誤解を招いたようで失礼しました。
とはいえ、●●●●だろうが●●だろうが、そして本書のネタであろうが、どれも似たようなものだとは思います。
この手のネタはよっぽど上手く扱わないといけないネタですが、本作は全く感心できませんでした。ただ、SNSとか見ていると面白かったと褒めている人もいるようで、なんて寛大なのだろうと感心しております。もしかするとそういう人は。そもそも幻想小説やホラーとして読んでいるのかもしれません。
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非表示さん

イコールではありませんが、ほぼ似たようなものです(笑)。
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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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