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オースティン・フリーマン『アンジェリーナ・フルードの謎』(論創海外ミステリ)
新年あけましておめでとうございます
旧年中は拙ブログにご訪問いただき誠にありがとうございました
本年も海外ミステリ全般
並びに国産のクラシックから昭和の作品あたりまで
ぼちぼちと読んで感想をあげていく所存です
何卒よろしくお願い申し上げます
旧年中は拙ブログにご訪問いただき誠にありがとうございました
本年も海外ミステリ全般
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ある深夜のこと、ジョン・ストレンジウェイズ医師は見知らぬ男の訪問を受け、急患の婦人を診てほしいと依頼される。さっそく患者のもとに駆けつけると、どうやら精神的なダメージが大きいようだったが、ストレンジウェイズ医師は適切な治療を施して事なきを得る。コカイン中毒らしい男や婦人の外傷の様子など不審な点もあったが、まだ経験も浅いストレンジ医師はそこまで関わることをせず、それっきりその夜のことは忘れていった。
それから数ヶ月。不動産屋の斡旋を受け、ロチェスターに診療所を構えることになったストレンジウェイズ医師は、現地で大家に会って驚く羽目になる。大家の女性はあの夜の患者、アンジェリーナ・フルードだったのだ。彼女は暴力的な夫から身を隠して暮らしており、ストレンジウェイズ医師はそんな彼女に惹かれていく。
そんなある日、アンジェリーナ・フルードが消息を絶つ。彼女は夫によって拉致されたか、あるいは殺害されたのかもしれない。ストレンジウェイズ医師は密かにソーンダイク博士に捜査を依頼するが……。

これはまた何というか、新年にふさわしい楽しい一作である(笑)。
解説によると本作はディケンズの遺作にして未完のミステリ『エドウィン・ドルードの謎』をモチーフにしているという。確かにもじったようなタイトルといい、失踪の謎を探る設定といい、十分に頷ける話である。
まあ、それはいいのだが、問題はフリーマンが本作で挙げてみせた真相が、想像の斜め上をいくものであったことだ。それはやられたという感じも少しあるけれど、とにかく大きいのはオースティン・フリーマンがこのようなネタを書いていたのかという驚きである。
他にも同じようなネタのミステリを読んだことはあるし、当時だから許される面はあるだろうが、フリーマンの場合、どうしても作風と合わないというか、そのギャップもあって余計に楽しい。
また、フリーマンが極力フェアにヒントを散りばめているせいか(あまり書くとネタバレになりそうだが)、特に何が、というわけではないけれど落ち着かない部分もちらほら。この気になるものの正体が、謎解きによって自分の中でも氷解するところもあって、そこも気持ち良いところである。
ただ、このメインのネタ一本で長篇を引っ張るのは少々苦しいようにも感じられた。捜査の歩みの遅さというか、特に中盤以降の中だるみは気になってしまう。暴力夫についての部分をもう少し膨らませれば、物語としてはより興味深くなったかもしれない。
とはいえフリーマンの作品の中では異色ともいえる本作、クラシックミステリのファンであれば読んでおいて損はない。
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Comments
Edit
2023年今年もよろしくお願いいたします しかしこの作品は
sugataさんご自身は、もうお読みになったのでいいでしょうが
(本作『アンジェリーナ・フルードの謎』を未読の方はこのあと、できれば、読まないでください、なるべくネタバレにならないように注意しますが。)
※ ※
戦前の旧訳の題名をリファレンスすると、大ネタが一瞬でわかってしまうという、けっこうトンでもない作品です。
(作者のせいでも現行本の訳者のせいでもないのですが……)
たとえば古典ミステリマニアで、この作品はまったくの初訳かな? それとも旧訳があって、その新訳かな? と興味が湧いて、翻訳書誌を調べたりしたら、その時点で「アウト」ですよね……。
微妙な話題で、他の方の注意を喚起しにくい面もあるのですが、とにかく、まかり間違っても、本書をこれから楽しむつもりでまだ未読の人は自分から、この作品の旧訳の訳題を、わざわざ調べないようにしてほしいものです(汗)。
Posted at 04:00 on 01 03, 2023 by Y・S
Y・Sさん
注意喚起ありがとうございます。
そうなんですよ、私もこの記事を書いた後、
他の人の感想をネットで見てみたのですが、そこそこ旧題が上がっていますね。
普段ならそういうところに気をつけていそうな人、
つまり業界人やマニアでもやらかしていたのが驚きでした。
おそらく未読だったために気づかなかっただろうとは思うのですが……。
Posted at 10:15 on 01 03, 2023 by sugata