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探偵小説三昧

天気がいいから今日は探偵小説でも読もうーーある中年編集者が日々探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすページ。

 

笹沢左保『セブン殺人事件』(双葉文庫)

 笹沢左保の『セブン殺人事件』を読む。新宿淀橋署の宮本刑事部長と本庁の佐々木警部補の二人を主人公にした連作短篇集である。
 収録作は以下のとおり。

「日本刀殺人事件」
「日曜日殺人事件」
「美容師殺人事件」
「結婚式殺人事件」
「山百合殺人事件」
「用心棒殺人事件」
「放火魔殺人事件」

 セブン殺人事件

 宮本刑事部長と笹木警部補、二人の刑事を主人公にしたところがミソ。二人は年齢も見た目も刑事としてのキャリもまったく正反対である。ただ、それぐらいの設定なら、その辺のよくあるコンビもの、バディものだ。著者はここに一捻りして、事件によって解決する役を替えることで変化をつけた。
 これはコンビものにありそうでなかった趣向であり、二人のやり取りに推理合戦という要素が加わり、単なるコンビもの以上の面白みは出ている。ただ、正直「推理合戦」とまではいかず、対決というよりはあくまで協力の延長であり、そこが惜しいところだ。

 惜しいといえばタイトルもご同様。本書は収録作が七作、各話のタイトルもすべて漢字七文字で構成されており、これらが『セブン殺人事件』の意味だと思われる。しかし、遊びとしては別に面白くもないし、事件自体はどれもシリアスなタイプなので、もう少しちゃんとしたタイトルにしたほう方がよかったのではないか。
 もしかするとそれ以外の意味合いがあるかもしれないので、ご存知の方はご教授ください。

 ついでに書くと、内容も惜しい。カバー表4にの紹介文には「息もつかせぬ展開、綿密なトリック、思いもよらない結末〜」とあり、帯にも「書店員が選んだもう一度読みたい文庫ミステリー第1位!」という威勢のいい惹句が記されているけれども、いくらなんでもそれは言い過ぎ。
 全体的なレベルとしてはまずまずと言ったところで、どちらかというとサスペンスドラマの原作みたいな内容が多い。軽い読み物としては悪くないけれども、ミステリとしてそこまで着目するようなところはない。少なくとも著者の代表長編あたりを期待するのは間違いである。
 ただ、ラストの「放火魔殺人事件」だけは嬉しい例外。タイトルどおり放火を扱った事件であり、不特定多数からどうやって犯人を絞るのか、また、その背景にあるものをきちんと膨らませれば、長編としてもいけそうなネタである。しかも抒情性という部分でも強く印象に残り、これを読めたことが本書の収穫といってよいだろう。

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プロフィール

sugata

Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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