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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


江戸川乱歩『明智小五郎事件簿 戦後編 IV 「影男」「赤いカブトムシ」』(集英社文庫)

 江戸川乱歩の『明智小五郎事件簿 戦後編 IV 「影男」「赤いカブトムシ」』を読む。
 乱歩が生んだ稀代の名探偵・明智小五郎。その明智の登場する作品を、物語の発生順にまとめた〈明智小五郎事件簿〉シリーズの最終巻である。これで戦前編、戦後編合わせて十六冊をようやく読み終えることができた。何となくひとつ宿題が終わった感じである。
 このシリーズについてはほぼ再読作品ばかりであったが、時間軸という流れで読むとまた違った印象があって面白かった。作品の前後関係や史実との因果関係なども解説に詳しく、編者の平山雄一氏にはヒラヤマ探偵文庫などでもお世話になっているが、メジャーからレア作品までありがたいかぎりである。

 明智小五郎事件簿 戦後編 IV

 さて収録作は長篇「影男」と短篇「赤いカブトムシ」の二篇。「影男」については四年ほど前に読んだので、まだ記憶に新しく、今回は流し読みに留める。申し訳ないが感想も当時の記事を参照してほしい。

 「赤いカブトムシ」は初読。こちらは小学三年生向けの学習誌に一年間連載されたものなので、短篇とはいっても多少はボリュームがある。基本的には少年探偵団と魔法博士の知恵比べというスタイルで、タイトルどおりギミックもカブトムシ中心。宝石だったりマトリョーシカ状態(もしくはタイムボカン的な)だったりカブトムシがてんこ盛りである。個人的には子供の頃にカブトムシを飼っていたこともあるし何の抵抗もないけれど、虫嫌いの子供にはさぞトラウマになったことだろう(笑)。
 なお平山氏の解説によると、本作は1954年の設定ではあるが作品は1957年発表であり、作中に普通にヘリコプターが使われるなど、日本が豊かな時代(高度経済成長期)に入りつつあるような雰囲気が感じられる。また、朝鮮戦争の休戦など世界情勢が少し落ち着いた時期でもあり、いろいろな意味で時代が明るくなってきた頃でもある。明智がこの事件を最後に六十歳で引退したのでは、ということも記されているが、これには明智の年齢もあるだろうけれど、そうした内外の世情が大きく影響しているような印象を受けた。
 そういえば日本のミステリも、探偵小説というよりは推理小説と呼ぶ方がしっくりくるような、新しい時代の作家、仁木悦子や松本清張らが登場した頃でもあり、乱歩もそういう風を強く感じていたのだろう。

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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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