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探偵小説三昧

日々,探偵小説を読みまくり、その感想を書き散らかすブログ


笹沢左保『アリバイの唄』(講談社文庫)

 「トクマの特選!」が順調そうで何よりだが、今度は『アリバイの唄』が予定されているとのことで、ひと足お先に手に取ってみた。こちらは講談社文庫版である。

 こんな話。元警視庁捜査一課の刑事だったタクシー運転手、夜明日出夫(よあけひでお)。ある夜のこと、彼がアベック客を乗せると、女性の方が三週間後に殺害される。被害者のメモから、夜明の幼馴染で逗子の豪邸に一人で暮らす大町千紗が容疑者として浮上する。しかし、夜明は彼女がそんな犯罪を犯すはずがないと、警察時代の友人、丸目刑事に協力し、アリバイを調査しようとするのだが……。

 アリバイの唄

 本作は元刑事のタクシー運転手、夜明日出夫を探偵役とするシリーズの第一作。渡瀬恒彦主演でテレビドラマ化されたのでご存知の方も多いだろう。
 原作版のキャラクターは丸坊主で柔道の名人、警察を辞めた理由は容疑者の妹と関係を持ったと週刊誌に書かれた責任をとったためで、そんな事実はなかったのに退職したことで妻に愛想を尽かされ、離婚した経歴もある。こう聞くと昔気質の強面の刑事を想像するが、意外にも実際には陽気で人当たりもよく、かなりまともな人物である。
 そういうキャラクターもあってか思った以上にクセがなく、適度にユーモラス、適度にシリアスな雰囲気で、万人向けの娯楽読み物といった感じである。テレビドラマ化されたのも宜なるかな。

 肝心のミステリとしても上々である。こういう一見お気楽な読み物でも、いつもどおり凝った仕掛けをポンポン放り込んでくるのはさすがとしか言いようがない。メインのネタはタイトルからも想像できるようにアリバイ破りが中心。どこかで見たようなトリックではあるが、スケール感が豪快で楽しく、設定もうまく生かして物語に馴染んでいる印象だ。タクシー運転手という職を生かして、夜明自らアリバイを車で検証したりするのもご愛嬌だろう。
 ほかにもダイイングメッセージ、そして題名の「アリバイの唄」の謎などもあって、著者のサービス精神は尽きることがない。ただ、後者に関しては、正直悪ふざけとしか思えないけれど(笑)。

 中盤まではかなり地味というか、ちょっとスタートダッシュに失敗しているなあという感じも受けたのだが、中盤以降、第二の容疑者が浮上するあたりから一気に面白くなる。各種トリックも合わせ、これは読んでおいて損はない一作だ。

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Author:sugata
ミステリならなんでも好物。特に翻訳ミステリと国内外問わずクラシック全般。
四半世紀勤めていた書籍・WEB等の制作会社を辞め、2021年よりフリーランスの編集者&ライターとしてぼちぼち活動中。

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